事務所トピックス
葵法律事務所

弁護士といえども、日常生活を送っているわけで、その中で体験したこと、思ったことを綴るページを設けました。

気楽にお読みいただける、そんなコーナーにしたいと思いますので、不定期更新ではありますが、どうかよろしくお願いいたします。

その第1回は音楽に関するお話です。

 

ロック界の三大ギタリストといえば、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ページというのが、古くからのロックファンにとっての定説といえます。

その内の2人、ジェフ・ベックとジミー・ページが、日本で一緒に演奏するとなれば、話題となるのは当然で、それゆえ最も高額なチケットは30万円に設定されていたそうです。

このコンサートには、ほかにもチープ・トリック等のミュージシャンや、なぜかジョニー・デップのバンドまでもが出演していたそうですが、ジェフ・ベックとジミー・ページの名前が大きくクレジットされたポスターもそうですし、前宣伝のされ方においても、この2人の「共演」がコンサートの目玉であると受け止められるのは当然のことでした。

しかし、コンサート当日、2人の「共演」は実現しませんでした。

コンサートの終わりの方で、ジミー・ページが出て来て、ジェフ・ベックにトロフィーを渡し、肩をポンと叩くと、一度も演奏することなく、ジミー・ページはステージを去ったそうです。

当然のことながら観客は怒り心頭です。

チケット代の返金を求めるような声が上がるのも心情的に見れば至極真っ当なことのように思えます。

ところが、今回の公演を主催した業者は、謝罪こそしたものの、ほかにも多くのミュージシャンが参加したイベントであること等を理由にチケット代の返金には応じないとしました。

 

では、実際のところ、法的に見てどうなのでしょうか?

詳細な経緯が不明ではあるけれど、現時点までの情報を前提とすると、本件においては債務不履行が成立し、少なくとも半額程度は返金されるべきであり、元々の契約内容や演奏しなかった経緯が明らかになった上のことですが、場合によっては全額が返金されるべきではないかと考えられます。

その理由は以下のとおりです。

まず、業者側は、ジミー・ページが演奏しないことになったのは直前のことであるとしていますが、もし仮にそうだったとしてもその段階で告知しなくてはならないと思います。

そうすれば、最悪、コンサート会場においてでも返金してもらうチャンスがあったからです。

業者側が何と言い繕おうとも、今回のコンサートの目玉がジェフ・ベックとジミー・ページの共演だったことは明らかで、いわば超高級なフレンチレストランで、コース料理のメインディッシュが出てこないようなものです。

この点、2人が同じステージに立ったのだから共演したことになるとか、厳密に見ると一緒に演奏するとは言っていないなどの反論はあり得るのかもしれませんが、このケースでそれは通用しないでしょう。

実際、主催会社の代表者は、自身のツイッターで、「2人のセッションはこれが見納め」という趣旨のことを書いていますが、「セッション」が演奏を意味することは明らかです。

メインディッシュを出さないで、しかもそのことが料理を出す前にわかっていたにもかかわらず、それを知らせず、前菜とデザートのみで満額の代金を要求するようなものだからです(ほかのミュージシャンの方、ごめんなさい)。

もっとも、上記の半額返金というのは、あくまで現時点での情報に基づく判断です。

今回の興行については、そもそも、ジェフ・ベックとジミー・ページが一緒に演奏することになっていたのか、やるならバックバンドとのリハーサルもあるはずなので、業者の言い分は疑問無しとしませんが、その点については元の契約内容を確認してみないとわかりません(最新のニュースでは元々演奏の予定はなかったという情報も出ています)。

解釈の食い違いということもあり得なくはないかもしれませんが、もし最初から2人の共演は約定になく、主催会社もそのことを承知していたとすれば、前宣伝の内容からして、詐欺にあたる可能性が高くなって来ます。

そうした場合は、最初からコンサートの目玉がないことがわかっていながら、目玉があるような告知でチケットを買わせていることになるからです。

たとえば、今年解散と言われるSMAPがいつか再結成されるということでコンサート会場に行ったら、メンバーのうち、2人か3人しかいなかったというのと同じでしょう。

であれば、そもそもチケットを買わなかったはずだということも言えますし、業者の側の悪質度が高いことになりますので、全額返金という線も十分にあり得るところです。

もっとも、実際のコンサートではほかのミュージシャンの演奏が聴けていますので、裁判となれば、全額とまでは行かないかもしれませんが・・・。

逆に、買うはずはなかったということになれば、遠方からわざわざ来た人については交通費も賠償の範囲に含まれるでしょう。

 

以上のように、真相がどこにあるのか、現時点で不明ながら、少なくとも事前告知を怠った主催会社の責任は免れないように思いますが、考えてみると、特に外国人ミュージシャンを招へいしてのコンサートというのはかなりリスクが高いともいえます。

本件の場合、現時点では可能性は低そうですが、著名なミュージシャンの中には非常にわがままな人もいるそうなので、最初は演奏する予定だったのが、直前になって心変わりをして「やらない」ということになるなんてこともまったく起きないとはいえないからです。

そうしたケースの場合、主催会社側が返金に応じざるを得なくなったとして、ミュージシャン側に対して求償あるいはギャラの返還を求められるかというと、それはそれでなかなかハードルの高いことだと思われます。

一昨年でしたか、ポール・マッカートニーの来日公演が、来日後の体調不良を理由に直前キャンセルになった時は、主催会社は大変だったと思います。

その時は、ポール・マッカートニーが翌年、仕切り直しの公演を実現してくれたので、損害はカバーできたのかもしれませんが、みんながみんな、そのように対応してくれるという保証もないわけです。

つくづく、ショービジネスの世界というのは、何かと厄介だと思うことしきりです。

2016年11月17日 > トピックス, 日々雑感
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