事務所トピックス

日々雑感~「半沢直樹」の心に沁みた言葉たちPART3

弁護士 折本 和司

「半沢直樹」の心に沁みた言葉たちの「最終回」です。

前の2回と併せて、合計3つを取り上げるわけですが、「心に残った言葉」という視点であれば、いくらでもあるというか、面白かったり至極名言だと思えたりするような言葉は溢れ返っており、言葉という点だけでも「宝箱」のような作品でした

「感謝と恩返し」「施されたら施し返す。恩返しです」「おしまいDEATH」「おかげでファイト満々よ!」「記憶にないは国会でしか通用しません」など、脳裏に刻み込まれた言葉は拾い上げたらきりがないくらいです。

もちろん、原作からそのまま使われたものもあれば、脚本で加えられたもの、さらには現場で俳優の方たちがアドリブで付け加えたものもあったそうですので、その意味でも、原作者、監督、脚本家、プロデューサー、俳優の人たちの総力が結集され、化学反応を起こしてできた奇跡のようなドラマだったといっても過言ではないでしょう。

 

そんな中で、今回取り上げる「心に沁みた言葉」は、何といっても第10話、最終回のクライマックスシーンにおける半沢直樹の、魂の叫びともいえるようなあの言葉たちです。

最終回、半沢直樹は、簑部幹事長が設定し、テレビで実況中継され、大勢の記者が待ち構える場所に中野渡頭取に代わって赴きます。

そして、債権放棄の要請を拒否すると伝え、それに引き続いて、簑部幹事長の不正な錬金術を暴くのですが、その場から逃げようとする簑部幹事長を白井大臣が引き留めたところでその言葉は放たれます。

「政治家の仕事とは人々がより豊かに、より幸せになるよう政策を考えることのはずです」「今、この国は大きな危機に見舞われています。航空業界だけでなく、ありとあらゆる業界が厳しい不況に苦しんでいる。それでも人々は必死に今を耐え忍び、苦難に負けまいと歯を食いしばり、懸命に日々を過ごしているんです。それは、いつかきっとこの国にまた誰もが笑顔になれるような明るい未来が来るはずだと信じてるからだ」「そんな国民に寄り添い、支え、力になるのがあなた方政治家の務めでしょう」「あなたはその使命を忘れ、国民から目をそらし、自分の利益だけをみつめてきた」「謝ってください。この国で懸命に生きるすべての人に。心の底から詫びてください」

 

リアルタイムで視聴しながら、これは本当にすごい言葉だと感じました。

もちろん、半沢直樹のこの発言は直接には本作のラスボスである簑部幹事長に対するものですが、同時にそれは、今まさにコロナ禍で苦しみながら必死でそれを乗り切ろうとしている私たち国民の状況を目の当たりにしながら、およそ国民に寄り添った政治に取り組もうとしない今の腐りきった政治家たちに向けて、その姿勢を痛烈に批判する強烈なメッセージとなっていたからです。

 

正直、このドラマを見始めた時、7年間の空白により時代背景が少しずれてしまっているので今の時代にフィットするのだろうかという一抹の不安がありましたが、観ている内にその不安はものの見事に吹き飛びました。

しかし、この最終回のこの場面を観た時には、それどころか、このドラマは、まさに今の日本国民、日本の政治家たちに向けて作られたものだし、ここで放たれたメッセージはその集大成であると感じ、強い感銘を受けました。

 

半沢のセリフの内容を順にじっくり見て行くとその素晴らしさがわかります。

「今、この国は大きな危機に見舞われています。・・・ありとあらゆる業界が厳しい不況に苦しんでいる」とは、明らかに長引くコロナ禍で苦しむ今の日本の現状を念頭に置いたものでしょう。

続く「それでも人々は必死に今を耐え忍び、苦難に負けまいと歯を食いしばり、懸命に日々を過ごしているんです。それは、いつかきっとこの国にまた誰もが笑顔になれるような明るい未来が来るはずだと信じてるからだ」も同様で、それは紛れもなく今のコロナ禍で明日が見えない嵐の中で、必死に頑張っている人たちを励まし、鼓舞するメッセージとなっています。

 

そこから、半沢の言葉は為政者に向けられます。

「そんな国民に寄り添い、支え、力になるのがあなた方政治家の務めでしょう」「あなたはその使命を忘れ、国民から目をそらし、自分の利益だけをみつめてきた」は、今の政治家たちに対する、よりリアルで強烈な批判となっています。

翻って現実を見れば、この国で懸命に生きる人たちを守るために誰よりも額に汗しなければならないはずの政治家たちはいったい何をやっているのでしょうか。

政治のトップにいる人間が、政治を私物化し、国の行事を選挙のために利用し、お友達のために不可解な国有地の払い下げや学部の設立に手を貸したりとか、コロナ対策で意味不明のマスクを怪しげな選考経過で実績のない業者に発注したりとか、コロナ対策事業をおかしな法人を介して電通あたりに丸投げしたりする様は、まさに半沢直樹が指摘する「使命を忘れ、国民から目をそらし、自分の利益だけをみつめる」ものとしか見えません。

ほかにも、金で買ったとの疑惑もあるオリンピックやJR東海や土建屋のためとしか見えないリニア新幹線に膨大な国費をつぎ込み、さらにはカジノというギャンブル事業に入れ込む様は、もはや骨の髄まで・・・なのではないかと絶望的な気持ちになります。

また、本来、政治家とは一線を画すべき立場にあるはずの官僚たちも、その大部分は政治家の言いなりとなり、それに歯向かう勇気さえ失っているようです(ここでも「黒崎を見習え!」と声を大にして言いたいところです)。

実際、総理大臣の不正が疑われる事件で公文書の改ざんを指示し、部下を自殺に追い込んだ恥知らずな官僚や、総理大臣に近い人間の犯罪容疑で裁判所が発した逮捕状を執行しなかった腐った警察官僚が、ぬくぬくと出世しています。

ついでにいえば、安倍政権から菅政権に代わっても、その政権の本質は変わっていないと断言しておきます。

安倍政権下で起きた数々の不正に関する疑惑が解明に向かう気配はなく、また、菅政権では官僚に対する支配をさらに強めようとしているように見えるからです。

本の表紙を変えても、中身が変わらなければ意味がないのに、こんな目くらましでいとも簡単に支持率が大きく上昇することには強烈な違和感があります。

 

話が少し逸れましたが、半沢直樹の言葉は、まさにそういう政治家を断罪し、心ある政治家、あるいはそれを志そうとする人たちに勇気を与えるものです。

ドラマの最後で、白井大臣が幹事長に反旗を翻し、無所属でやり直そうとする様がさわやかに描かれていましたが、そのような覚悟を持った政治家が多数派になれば、間違いなく未来は明るいものになるのだと信じます。

逆に、無所属となった白井大臣が孤立し、簑部幹事長の同類が国政を牛耳り、利権をむさぼるという状況が、衣替えをしただけで続くようであれば、未来も暗く腐ったものに違いありません。

そう考えると、半沢直樹の言葉は、国民の不満や日ごろ感じているうっ憤を晴らすためなんかではなく、このドラマを見たひとりひとりの国民が、今の政治を変えるべく、自身の意識を変え、行動することを強く促すもので、私たち視聴者に向けられたもののように思えます。

おそらく、このドラマは録画され、またいずれDVDが発売、レンタルされることから、今後も長く多くの人が繰り返し視聴することになるでしょうが、半沢直樹の言葉に何かを感じた人たちが、この国の未来を良い方向に変える力を得るための起爆剤になるのではないかとさえ期待してしまいます。

 

こうやって振り返ってみても、このドラマには至言といえるような言葉が煌めいています。

このような作品を生み出してくださった原作者、プロデューサー、脚本家、監督、そして堺雅人をはじめとする俳優の方々に心から感謝したいと思います。

2020年10月11日 > トピックス, 日々雑感

日々雑感~「半沢直樹」の心に沁みた言葉たちPART2

弁護士 折本 和司

前回に続いて、「半沢直樹」の中から、心に沁みた言葉を取り上げます。

今回は、第4話の中で半沢直樹が東京セントラル証券の部下たちに語り掛けた熱いメッセージです。

堺雅人がすごいのは、難しい長台詞を、本当に役になりきって画面を飛び越えるほどに力強く伝えきるところで、その真骨頂は、「リーガルハイ」でも観ることができます。

しかも聞くところでは、それをNGなしにやり遂げるというのですから、本当に信じられません。

才能もあるのでしょうが、何より見えないところで準備を重ねておられるに違いないわけで、心から敬服するしかありません。

とにかく、この第4話の長台詞でも、そんな堺雅人の演技の素晴らしさを堪能することができます。

 

この第4話は前半のクライマックスですが、取り上げるのは、あくどい連中に倍返しを成し遂げた半沢直樹が、いよいよ東京セントラル証券を去るにあたって、部下たちから促され、彼らにメッセージを残すというシーンです。

半沢直樹が伝えるメッセージは、バブル期以降の日本で何が起きていたかを知らない人たちにとっても強く心に響くはずですが、あの馬鹿げたバブルで何が起きていたか、その顛末を知っていれば、より深く伝わると思うので、前半部分と後半部分に分けて取り上げます。

最初、半沢直樹は、「勝ち組負け組」の話をします。

「勝ち組負け組という言葉がある。私はこの言葉が大嫌いだ」「だが、ここに赴任した時によく耳にした。銀行は勝ち組、俺たち子会社の社員は負け組だってな」「それを聞いて反発するものもいたが、大半は自分はそうだと認めてた」「大企業にいるからいい仕事ができるわけじゃない」「どんな会社にいても、どんな仕事をしていても、自分の仕事にプライドを持って、日々奮闘し、達成感を得ている人のことを本当の勝ち組というんじゃないか」

アメリカ的な新自由主義的な方向に舵を切った今の日本は、貧富の差が拡大し、階層が固定化してしまう、そんな社会になりつつあります(もちろん、そうした方向性そのものを変えるべきなのですが)。

ドラマの中で語られたこの「勝ち組負け組」という言葉は、一見すると企業社会におけることのように聞こえますが、今や社会全般で否応なく使われている分類用語ともいえます。

この言葉は自分がどこにいるかを意識づけさせてしまう悪魔の呪文なのです。

半沢直樹は、プロパーと呼ばれ、親会社の社員から蔑まれる子会社の人間たちに、その意識を振り払い、プライドを持って生きるよう勇気づけるのですが、「勝ち組負け組というカテゴライズに囚われてはいけない」というメッセージは、すべての世代に、すべての人たちに通じるに違いありません。

 

ドラマの中で、半沢直樹はさらに続けてこのような話をします。

「君たちは、大半は就職氷河期で苦労をした人間だ」「そうした事態を招いた馬鹿げたバブルは、自分たちのためだけに仕事をした連中が顧客不在のマネーゲームを繰り広げ、世の中を腐らせてできた」「その被害を被った君たちは、俺たちの世代とはまた違う見方で組織や社会を見ているはずだ。そんな君たちは10年後、世の中の真の担い手になる」「君たちの戦いはこの世界をより良くしてくれるはずだ」「どうかこれからは胸を張って、プライドを持って、お客様のために働いてほしい」

ここはさらに深い発言だと思います。

 

私が弁護士になった平成元年、日本はまさにバブルの絶頂期でした。

急激な円高に対する極端な金融緩和によってあり余った金が不動産や株式市場に流れ込み、異常な不動産価格の上昇、株高を招き、気が狂ったような異様なマネーゲームが繰り広げられます。

しかし、行き過ぎたバブルを調整するために取られた金融引き締め策の影響もあり、いびつに膨れ上がったバブルはいきなり崩壊します。

そして山が高かった分、谷はいつまで経っても底が見えないほどに深く、以後、バブル、そしてバブル崩壊の後遺症は重く日本社会にのしかかるのです(実際、弁護士の仕事の現場では、その後遺症はまだ終わっていないと感じることがしばしばです)。

ロスジェネ世代やゆとり世代は、紛れもなくその被害者です。

しかし、時代が変わり、彼らが世の中の担い手になる時が必ず来ます。

このドラマの中で、主人公が、バブルを招き、マネーゲームに狂奔した世代を痛烈に批判しつつ、次の世代に対して、「胸を張って、プライドを持って、お客様のために働いてほしい」と訴えかけるそのメッセージは、あの時代を演出した人間たちの愚かさを知れば、より重く、より深いものだといえるでしょう。

 

かつてのバブルは極端な金融緩和によって後押しされて起きたものですが、今の日本は、安倍政権における「異次元の金融緩和」なるものによって、多くの国民は実感できないものの、一部の大企業は間違いなく、不公正、不公平な形でその恩恵を受け、上げ底の株高、東京などの主要都市における不動産バブルをもたらしています(ドラマの中の「伊勢志摩空港」のような腐った錬金術は、まさに今の日本で現在進行形で起きている現実ともいえます)。

かつて見たあの景色と似たデジャブと感じるのは私だけではないはずです。

そうなると、次に起きるのは、異次元の金融緩和の反動であり、遅かれ早かれ必ずやって来る近未来です。

公正な所得の再分配がなされなくてはならないと強く思いますが、少なくとも、あの馬鹿げたバブルとその崩壊から何かを学び、二度と同じ過ちを繰り返さないようにしなくてはならない、そのためには自分たちの利益の追求のみに奔走するのではなく、お客様(他者)のために働くという姿勢をすべての人が共有する価値観にすることが大切なのです。

 

半沢直樹の作者である池井戸潤氏は、まさにそんな狂ったバブルとその崩壊を目の当たりにして来た元銀行員ですので、きっとそんなことを思いながら、この作品を作られたのでしょう。

原作のタイトルである「ロスジェネの逆襲」とはきっとそういうことなのだと思います。

 

「半沢直樹」のお話はまだ続きます。

 

2020年10月04日 > トピックス, 日々雑感

日々雑感~「半沢直樹」の心に沁みた言葉たちPART1

弁護士 折本 和司

「半沢直樹」が終わりました。

個人的に堺雅人の大ファンということもあり、また前のシリーズが非常に面白かったので、今回は逃さずリアルタイム視聴しました。

一つのドラマすべてをリアルタイム視聴したのは生まれて初めてのことかもしれません。

始まる前は、前の作品の出来があまりに素晴らしかったこともあり、それを超えた作品に仕上げるのは大変なのではないかとも思っていたのですが、予想をはるかに上回る面白さで、ご多分に漏れず、現在は「半沢ロス」状態となっています。

面白かった要因は、原作が持つストーリーの重厚さと脚本の巧みさによるエンターテインメント性の高さ、そして個々の俳優の演技の素晴らしさにあるのだと思いますが、もう一つ心を惹かれたのは、節目節目で語られる「言葉の力」です。

主として、その言葉は堺雅人の口から発せられるもので、彼の演技力によってその言葉がより強く心を打つとも思うのですが、とにかく、この作品はきっと観る人の心に何かを残すに違いないと思えるのです。

というわけで、「半沢直樹」の中から、いくつか心に沁みた言葉を取り上げてみたいと思います。

 

まず、その一つ目は、最終回で、半沢直樹の妻である花が半沢直樹を励ます時のセリフです。

追い詰められ、いよいよ最後の行動に出る前の夫婦の会話の中で、花が、これまで懸命に闘ってきた半沢を励ますために発したものですが、その途中からを取り上げます。

「何があったか知らないけど、もう頑張らなくていいよ」「直樹は今まで十分すぎるくらい頑張った」「いつもいろんなものを抱えてボロボロになるまで戦って、必死で尽くした銀行にそれでもお前なんかいらないなんて言われるならこっちから辞表たたきつけてやりなさいよ。サラリーマンの最後の武器でしょ」「今までよく頑張ったね。ありがとう、お疲れ様」「ていう気持ちでいればとりあえず少し気が楽になるでしょ」「仕事なんてなくなったって、生きてればなんとかなる」「生きていれば、なんとかね」

この言葉に心を打たれた人は多かったと思います。

何といっても、この放映日の朝、女優の竹内結子さんが亡くなり、どうやら自殺ではないかとのニュースが流れたばかりでした。

お子さんを二人抱えながら、また女優として立派に成功したと見られている中で、なぜ彼女は死を選んでしまったのか、多くの人はショックを受けたと思います。

竹内結子さんに限らず、ここのところ、著名な俳優の方たちが続けて自殺しているということもありますが、おそらくこの花のセリフは、今の国民に向けられた励ましのメッセージだったに違いありません。

今回のこのドラマは、まさにコロナ禍の真っ最中にいろいろな制約を受けながら制作されたわけで、2~3か月のクールの作品でありながら製作期間は7ヶ月にも及んでいます。

このドラマではずっと撮影と並行してドラマの脚本が仕上げられていたとの情報もありますが、制作者たちは、コロナの影響が長引き、より深刻化して行く状況下で撮影と同時進行で作り上げて行かれたこのドラマの脚本に、コロナの影響で経済的に苦境に追い込まれ、苦しむ国民への想い、願いを籠めたのだと思うのです。

 

竹内結子さんについていえば、もし、彼女がもう一日思いとどまって「半沢直樹」を観て、花さんの言葉を聞いていれば、自殺せず、生きることを選んでくれていたのではないかという気すらしますが、花さんが発する言葉に勇気づけられ、また竹内結子さんのことと重ね合わせて涙した視聴者は多いと思います。

それほど、花さんの「生きてさえいればなんとかなる」という、一見何気ない言葉には力と深さが感じられるのです。

 

実は、このドラマの放映の後、友人と会っている時にも同じような話が出ました。

その時にこんな話をしています。

「実感としては、生きている内の99%の時間は苦しいけれど、残りの1%で報われると、『ああ、生きていてよかった』と思う。だから苦しい時間の方が圧倒的に長いかもしれないけれど、あきらめさえしなければその先には労苦が報われる時がきっとやって来る、そう信じればなんとかやっていける」

花さんの言葉の意味とは少しニュアンスは違うかもしれませんが、生きることの苦しさの向こう側にきっと明るい未来があると信じたいし、そのためには、もし今の場所がだめなら、命を絶つのではなく、逃げ出せばいいと思うのです。

 

花の言葉はちょっと長いセリフなので流行語大賞になることはないかもしれませんが、観た人に踏みとどまって前を向くきっかけを与える名言だと思います。

 

まだ取り上げたい言葉がありますので、続きはまた書きます。

 

2020年10月04日 > トピックス, 日々雑感

日々雑感~コロナリスクと向き合う医療者、医療機関にこそ手厚い補助を!

弁護士 折本 和司

先日の記事で取り上げたことですが、医療事件で相談に乗っていただいている協力医が所属しておられる県内のある医療機関では、採算度外視で、コロナ感染のリスクのある発熱患者を受け入れているとのことでした。

そして、このままの状況が続けば、病院が潰れるかもしれないという危機感を訴えておられました。

一方で、同じエリアのある総合病院は、発熱があるというだけで、診療を断っているそうで、発熱患者については、コロナ感染を避けるため、救急搬送すら受け入れていないそうだということで、いろいろと思うところもあり、記事に取り上げたわけです。

しかし、その後の報道で、その協力医が所属しておられる病院内でコロナ感染が起きてしまったことが明らかとなりました。

そこで、あらためて、この問題について取り上げてみたいと思います。

 

最初に結論めいたことを申し上げますが、記事のタイトルにもあるとおり、政府も自治体も、「採算度外視で、コロナ感染のリスクのある発熱患者を受け入れている医療機関や医療者」に対してこそ、より手厚い補助をすべきです。

政府は、金融市場にじゃぶじゃぶと金をつぎ込んだり、別の機会の取り上げたいと思いますが、感染が治まらず、再拡大している状況下で「GO TOキャンペーン」こと「コロナ感染を全国に広めつつ、自民党の有力政治家のお仲間に美味しい思いをしてもらいましょう的キャンペーン」に巨額の資金を投入したりしていますが、ずれているとしかいいようがありません。

もちろん、すそ野の広い旅行業界、観光関連業界を活性化するための政策の必要性は否定しませんが、手法も誤りだし、何といっても優先順位を間違えていると思います。

今何よりも大切なことは、コロナ感染を抑え込むことであり、それと並行してなすべきことは、将来に向けて継続的に感染を抑え込むような仕組みを構築することです(もちろん、苦境に陥っている事業者、国民への補助は車の両輪で必須ですが)。

そうしなければ、個々の業種に対する活性化策も感染拡大を招く要因にしかならず、結局のところ、活性化どころか、コロナ感染が長期化してしまい、逆効果になってしまうからです。

であるとすると、優先すべきは、医療の最前線で、コロナリスクと向き合う医療者、医療機関に対して経済的な援助、必要な医療物資の手当てを行い、特に、コロナリスクを積極的に向き合っている医療者、医療機関に対しては、特に手厚い補助を行うことだということは火を見るより明らかです。

東京女子医大病院では、退職希望者が数百人も出ているという報道がありましたが、逆に、こんな時だからこそ、医療者にはプラスαの収入が保障されるような仕組みを作ることで(もちろんそれだけではなく、医療安全、保育所の確保など複合的な手当てが必要ですが)、医療者が医療現場で働こうと思える動機付けにつなげるべきです。

 

あと、コロナに感染した医療者に対する差別、偏見も起きていますが、何を考えているのかといいたくなります。

先日、医療事件で協力医に相談するため、ある都内の医療機関を訪れたところ、ちょうどそこにPCR検査を予約していた方がやってきたのですが、それだけで妙に緊張してしまいました。

しかし、よくよく考えてみれば、コロナ感染の可能性のある患者に対し、検査や診療行為を行う医療機関においては、それこそが日常です。

診察、治療、手術もそうですが、入院患者で容態が悪ければ、体位交換をしてあげたり、ふろに入れないなら、清拭をしてあげたりと、何から何まで濃厚接触そのものなわけです。

コロナ感染の可能性のある患者に対する医療に関わる医療者の人たちは、自身が感染するリスクと向き合いながら、患者の命や健康を守ろうとしているわけで、心からリスペクトされるべきだと思うのです。

もちろん、医療機関にとっては、経営上の不利益も非常に大きいといえます。

前にも書きましたが、発熱患者は他の患者と同室というわけには行きませんので、コロナ感染の可能性のある患者を受け入れるだけで、収益的にはマイナスであり、さらに感染者が出ると、外来診療をいったん止めなくてはならないわけで(協力医のおられる病院はまさにそうなりました)、ただでさえ、今の医療機関は経営的に厳しいといわれる中で、使命感をもって取り組み医療機関を破綻させるようなことは絶対にあってはならないし、今こそセーフティネットとしての医療を守るために最善を尽くすべきです。

もちろん、医療者への偏見を取り除くことも必要であり、メディアにおいても、コロナと向き合う医療者、医療機関の置かれた状況を、敬意をもってキャンペーンのようにして取り上げてもらいたいと思います。

2020年07月23日 > トピックス, 日々雑感

事件日記~コロナ危機と「再生手続」

葵法律事務所

給与所得者や個人事業者の方が多額の負債を抱え、債務整理の相談に見えて法的な整理を選択する場合、裁判所の手続としては破産か個人再生の両方の選択肢があることについては、前にもこのホームページで取り上げたことがあります。
弁護士としては、その場合、できる限り個人再生手続での法的整理を実現してあげたいと考えるわけです。
もちろん、個人再生手続についても当然ながら一定の要件があり、要件にあてはまらず、申立自体ができないケースもあるわけですが、ハードルが高くても、依頼者とともにそのハードルを乗り越え、再生計画認可にたどり着ければ、自宅を処分しないで済むであるとか、これまでどおり事業を続けられるわけで、築き上げた生活基盤を維持できることになれば、その満足度は非常に高いものがあります。
今回のコロナ危機の実体経済、国民生活への影響は非常に重大ですので、ぎりぎりの状況における選択肢ということで、個人再生手続について取り上げてみたいと思います。

コロナ危機の影響は様々ですが、現状での急な収入減少は、住宅ローン、自動車のローン、事業の運転資金、子供の学費などの避けられない支出を抱えている方にとっては非常に大きなダメージとなります。
そして、いよいよ返済が難しくなれば、債務整理を検討しなくてはなりませんが、経験的に申し上げると、もう少し早い段階で相談に来てもらえれば別の選択肢があったのにと感じることは決して稀なことではありません。
前述のとおり、抱えた債務に対する法的整理の方法としては、大きく分けて破産と再生手続があるのですが、破産と異なって、再生手続を選択すれば、前述のとおり、不動産を残し、商売も続けて行ける可能性があります。
もちろん、再生手続にも要件があり、そもそも要件を満たしていない場合もあるのですが、要件を満たすかどうかが微妙な場合に、再生手続前提で弁護士が介入し、生活を立て直しながら、再生の要件を満たすように準備をして行くこともケースによっては十分可能なことです。
たとえば、弁護士介入により、債権者への返済をいったん止め、当面の経済的な余力を確保し、ご自身の収入増に注力してもらい、それをしばらく続けながら再生手続の最重要要件である将来の安定した収入の見込みを認めてもらえるよう実績を積み上げて行ければ、要件クリアとなります。
また、自宅の不動産を保有し続けたいのであれば、原則として住宅ローンの支払いは続けないといけませんが、滞納が続くと代位弁済がなされてしまい、そうなると再生手続における住宅ローン特別条項の適用が受けることが非常に難しくなって、不動産を手放さざるを得なくなります。
そうならないためには、代位弁済されてしまう前に、弁護士が介入して他の負債の支払いを止め、住宅ローンだけは優先的に支払えるようにし、あわせて早期に住宅ローンの債権者である金融機関との話し合いを開始しておくことが肝要となります。
再生手続の場合、清算価値チェックシートで資産評価を行った結果にもよりますが、多くの場合、住宅ローン以外の一般債務は5分の1程度に圧縮され、それを3年もしくは5年の分割払いで返済すれば足りることになりますから、この手続を利用するメリットは非常に大きいといえます。
しかし、上記のような要件の制約があり、またタイミングを逸して経済状況が厳しくなれば、活用できたはずの再生での生活確保が不可能となってしまうことになりかねません。
ですので、本当に切羽詰まるよりも前に、早め早めに再生手続を利用できる見込みについての検討を開始すべきです。
なお、手続費用ですが、弁護士が申立代理人となる場合とそうでない場合とでは裁判所に納める予納金の金額が少し違ってきます。
これは、申立代理人である弁護士が、裁判所の個人再生委員の仕事の一部を負担するため、その分予納金を低くしてくれるのです。
もちろん、弁護士に依頼するとなると弁護士費用がかかりますが、分割に応じてくれる弁護士もいますし、再生手続には前述したようなテクニカルな要素もありますので、手前味噌ではありますが、弁護士に相談することをお勧めしたいと思います。

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