事務所トピックス
葵法律事務所

小林製薬が生産した「紅麹」による腎機能障害の問題は、死者、感染者数も日を追って増え、さらに計170社もの企業に他の企業にも小林製薬が生産した紅麹が提供されており、今後の影響がどうなるか予断を許さず、底なしの様相を見せています。
この事件のニュースに触れて、いくつか考えてみたこともありますので、ここで取り上げてみます。

そもそも、腎臓は体内で産生、吸収された代謝産物,化学物質,薬剤等を濃縮し,排泄する、小さいながら非常に重要な臓器ですが、それだけに薬剤等の影響で腎障害をきたしやすいというリスクを抱えています。
事件の関係で調べたこともありますが、薬剤等の影響で腎障害をきたしやすい理由については、腎臓への血流量が豊富なため(心拍出量の25%程度といわれてるそうです)、薬物も当然多く流入してしまうであるとか、メカニズム的に薬物が上皮細胞に取り込まれやすい仕組みがあり、構造的にも薬物の濃度が上昇して毒性域に到達しやすい等、薬物の影響で腎障害が誘発されやすいといった機序があるということです。
実際、小林製薬の事件では、急性尿細管間質性腎炎に罹患されているとの報道がありますが、薬剤性の腎機能障害の約半数は急性尿細管間質性腎炎という病態を示すそうです。
実は、当事務所で扱っている事件でこれから提訴予定の症例の中に、抗菌薬の選択を誤ったために急性の腎不全をきたして亡くなられたという医療事故があります。
同症例では、バンコマイシンとゲンタマイシンの組み合わせによって、腎障害の増悪を招く副作用が助長され、約20日の連続投与で末期的な急性腎不全をきたすに至ったのですが、事程左様に、薬剤性腎障害はまさに命に関わる重大な病態といえるわけです。

ところで、小林製薬の問題では、事実経過が徐々に明らかになっている途中で、まだはっきりしない点が多くありますが、問題の紅麹が生産された大阪の工場が昨年12月に閉鎖されたとのことです。
また、当該の紅麹ですが、ここにきて、その中から「プベルル酸」が検出されたという報道が出てきました。聞き慣れない名前ですが、どうやら青かびから産生されるもののようです。
もっとも、小林製薬はずっと未知の物質であるがごとき発表をしており、「プベルル酸」との特定は厚労省の発表で出てきたものですから、小林製薬の情報開示の姿勢にはやはり疑念があります(今年2月頃には株価が暴落したという報道もあり、インサイダーではないかとの声も上がっており、疑問は尽きません)。

ちょっと話を戻しますと、今回の報道を見ているうちに、当事務所で扱っている別の医療事件とちょっと状況が似ているところがあると思い至りました。
その事件というのは、白内障の手術後に感染性眼内炎を発症したという症例に関するものですが、実は、当事務所の依頼者以外にも、同じ日に白内障手術を受けた人に感染性眼内炎を発症した人が複数いたことから、手術との関連が疑われたのです。
あとになって、患者の感染の起因菌が、実はは真菌、つまりカビ菌だったことが明らかになるのですが、当該眼科の手術室の壁の巾木から真菌が検出されていたのです。
つまりは、手術室が不衛生であったため、カビ菌が繁殖して何らかの形で患者に感染したという機序が明らかとなったわけです。

小林製薬の事件の起因物質がカビに由来するものであることからすると、上記の事件と同じく、生産現場が不衛生なために紅麹の生産過程で青かびあるいはそこからできた「プベルル酸」が入り込み、増殖した可能性が考えられます。
青かびは湿気が高く、空気が澱むような場所であればどこでも発生するからです。
とすると、大阪工場の閉鎖が問題の発覚に近接した時期である去年12月だったことは、もしかすると証拠隠滅なのではないかと疑われても仕方のないところといえます。
生産現場が不衛生であったか否か、青かびが繁殖していたか否かは、現場を検証すれば明らかになる可能性があるのに、肝心の工場が閉鎖されてしまっては、その検証は容易でなくなるからです。

もちろん、まだまだわからないことだらけです。
「プベルル酸」はかなり毒性の強い物質のようですが、腎機能への影響についてはまだはっきりしない点があるとのことですし、青かびから「プベルル酸」が生成される機序の解明もまだだからです。

しかし、あらためて考えてみると、継続的に摂取されることの多いサプリの人体への影響は決して軽視できないものです。
今日日、猫も杓子も、健康のためにサプリを摂取するのが当たり前になっていますが、その安全性についてはわからないことが多いというだけでなく、実質的には野放しの状態といっても過言ではありません。
特に、今回の小林製薬の商品は、機能性表示食品と、もっともらしくカテゴライズされていますが、早い話、当該企業の自主申告(届出のみ)でそのように謳えるわけで、公的な機関による審査がなされないわけですからなおさらです(ちなみに、この機能性表示食品も安倍政権の時に認められたものです)。

私たち消費者が流通する情報を鵜呑みにせず賢くならなくてはならないことはそのとおりですが、健康や命に関わる食品やサプリ、飲料等の安全性のチェックが公的な形で担保される仕組みは必須なのだとあらためて痛感します。

2024年03月30日 > トピックス, 日々雑感
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