事務所トピックス
弁護士 折本 和司

こうの史代さんの同名の原作漫画を片渕須直監督がアニメ映画化した「この世界の片隅に」を観て来ました。

キネマ旬報で、昨年の邦画第一位に輝いたこの映画については、お話したいことがたくさんあります。

もちろん、究極の反戦映画ともいえる映画自体の出来栄えの素晴らしさについてもなのですが、このようなマイナーな映画がじわじわと広がる波のようにヒットを記録していることについてもいろいろと思うところもあります。

さらに、この映画については、私が広島出身であり、また、被爆二世であること等もあって、ごくごく個人的な思い出に連なるようなお話も山のようにあります。

というわけで、最初は、そのあたりからお話してみたいと思います。

 

私は、原爆ドーム、平和公園のすぐそばの、現在、地元の新聞社がある場所で生まれ育ちました。

なので、物心ついた時から毎日眺めていた平和公園は、その後、通学路にもなり、また、毎日の犬の散歩のルートにもなっていたので、私にとっては、あまりに思い出の多い、生活の中の一部というか、本当に庭といえるような場所でした。

そういえば、初めて自転車に乗れるようになったのも、平和公園の中のちょっとした坂のある場所でした。

また、自宅近辺だけでなく、広島市内やその周辺については、ほぼ知らない場所はないくらい、あちこち飛び回っていました。

そうしたこともあって、この映画で描かれていた風景は、私にとっての原風景ともいえるのです。

もちろん、戦後生まれの私にとって、映画で描かれた風景は、原爆により破壊されて消え失せたもののはずなのですが、映画で描かれる広島の空気感は、まさに私がこよなく愛した広島の街そのものでした。

草津あたりの遠浅の浜辺も、主人公のすずがスケッチする福屋百貨店も、原爆ドームのすぐそばに掛かる相生橋から眺める街の風景も、大正屋呉服店(平和公園の中のレストハウスにあたります)の向こう側にちらっと見える元安橋(原爆ドームのすぐ南の橋です)も、みんなすべて私の大好きだった広島の街の景色なので、描かれているのを見てその都度何だか懐かしく感じました。。

ちなみに、家族の会話の中に出て来る古江という地名は、私がかつて好きだった女の子が住んでいた町でもあります。

そして、8月6日の、あの数十万人の命を一瞬にして奪ったきのこ雲。

映画でも描かれるあのきのこ雲の下に、私の父はいて、かろうじて生き延びました。

父の両親は諦めていたそうですが、一週間後に歩いて、山口の実家に戻って来たそうです。

一方、私の母は、当時、山口県の柳井市にいましたが、やはりきのこ雲を見たそうです。

それから数年して、母は父と出会い、結婚するのですが、呉から見える、空に盛り上がるきのこ雲をちょうど逆側から母も見ていたのだと思いが巡って、胸が締め付けられました。

もう一つ、「この世界の片隅に」を観ていて、私の中で強く印象に残ったのは相生橋でした。

この映画の素晴らしいところについては、あとでネタバレにならない程度に触れようと思いますが、この相生橋という橋がとても印象的に描かれています。

知らない方もおられると思うので簡単に説明しますと、相生橋は、市の中心部、原爆ドームのすぐそばに架かる橋で、ちょうど、そこで川が二股に分かれているため、T字になっているという特徴があります。

エノラ・ゲイが、原爆を投下するにあたって、T字の相生橋を投下目標にしたとされています(実際にはほんのわずか東寄りの上空で爆発しています)。

相生橋は、戦前戦後を通じて幾度か架け替えられていますが、今も現役で、まさに歴史の証人といえます。

私の中では、原爆ドームや平和公園以上に平和の象徴といえる存在なのです(ついでに触れると、映画の中で、相生橋と一緒に描かれている川沿いの小学校があるのですが、それは私の出身校の本川小学校です)。

くどくどと相生橋のことを書いてしまいましたが、それにはもう一つ理由があります。

実は、私は「相生橋から」という歌を作り、CDにまでしています。

橋の上の歩道で、後ろを通り過ぎる路面電車のゴトゴトという音を聴きながら、原爆ドームや平和公園、そして川面を眺める、それは、私にとって、とても大切な時間でもありました。

横浜から広島に帰省して相生橋に佇んでいる時に出来たのが「相生橋から」という歌でした。この歌は、平和を願うためのメッセージソングなのですが、この映画の中でも、相生橋は、まさにそのような場所として描かれていたと思います。

それがとても嬉しく、でも、ちょっと悔しい気持ちになったのです。

長くなりましたので、批評のようなことはPART2で書きます。

まだこの映画を観ていない方は、老若男女を問わず、ぜひぜひ映画館に行ってください。

生きるための何かを与えてくれる、映画にはそんな力があることを確信できる、本当に素晴らしい作品です。

2017年01月15日 > トピックス
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