事務所トピックス
葵法律事務所

ここ数年の間に、研修医による医療事故を複数経験しました。
それまでは研修医の医療事故は相談としても受けたことがなかったので、あれっと思ったのですが、いずれも一定の経験を有する医師であれば犯さないであろうというかなり初歩的なミスが重大な結果に結びついたというものでした。
先日、弁護士の世界がギルド的であって、実務的な経験を積むために先達の指導が必要だということを述べましたが、医療事故を扱って、臨床医療の一端に触れると、患者の命を預かる医療の世界こそ、経験豊富な医療者からの伝承というか、そうした指導が必須な領域なのだと痛感させられます。

そういえば、3年ちょっと前に研修医が起こした死亡事故で、その研修医が刑事責任を問われ、有罪判決を受けたということがありました。
かなり大きなニュースともなったその死亡事故は、薬の取り違えだったのですが、確か、その研修医は、予定していた検査に使用した薬が浸透圧が高いことから禁忌とされていることをまったく知らなかったということでした。
ところが、その事故においては、研修医が使用しようとする薬を誰かがチェックをするような体制はなかったというのです。
そこで疑問なのは、研修である以上、指導医がいるはずなのに、指導医は何をしていたのかということであり、もしそれが構造的なものであったとすれば、それこそが最も重大な問題ではないかと思うし、研修医個人の刑事責任を問うということについては、当時、非常に違和感を覚えました。

経験した研修医の医療事故の内の1件も、そういう意味では非常に似たような事故でした。
それは、急性腹症の患者で、来院直後の段階で白血球数が2万を超えており、激しい腹痛に加え、嘔吐までしているのに、対応した大学病院の研修医は、単なる胃腸炎と診断して胃腸薬を処方して帰宅させてしまったのですが、同日深夜、患者は、絞扼性イレウス(腸閉塞)から腹膜炎を起こし、死亡したのです。
患者を帰宅させるという判断をした医師が研修医だったということは、あとで証拠保全をして初めて知ったのですが、驚いたのは、電子カルテの何処を見ても指導医の関与がまったくうかがえなかったということでした。
あとで別の大学病院の医師にうかがったことですが、そちらの大学病院では、研修医に単独で微妙な診断はさせず、個々の医療行為については、その都度必ず指導医がチェックする仕組みになっているそうでした。
また、ある国立の大学病院が設けているガイドラインでは、研修医が単独で行っていいことと単独で行ってはいけないことが詳細に定められていました。
薬の取り違えの症例にしろ、イレウス患者を帰してしまい、死亡させた症例にしろ、もしこの国立大学病院のガイドラインに沿うような運用がなされていれば、死亡という最悪の結果は生じなかったであろうと思うのです。

この研修医の研修システムについては、いろいろと複雑で構造的な問題があるようで、事件のこともあって、多少勉強したところもありますので、いずれ取り上げてみたいと思うのですが、経験した事故について申し上げると、病院側が十分な指導ができない体制の中で、研修医を安価な労働力として位置づけているのではないかという印象を強く受けました。
もちろん、最初は誰もが臨床未経験であり、そこから多くの症例を経験することで、医療者としての力を身に着けることができるわけですが、先ほど触れたガイドラインにもあるとおり、多少でもリスクを伴うような医療行為については、研修医単独ではなく、必ず指導医が付き添うか、チェックを受けるという運用を徹底し、研修医任せにしないということが、悲惨な医療事故を減らし、また、研修医が真に信頼される医師になるために必須のことだと思うのです。
研修医を受け入れる医療機関においては、目先のコストに囚われることなく、将来の医療を担う医師を責任を持って育て、質の高い医療を実現し、避けられるはずの医療事故が起きないように日々努力してもらいたいと心から願って止みません。

2017年10月18日 > トピックス, 医療事件日記
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