事務所トピックス
葵法律事務所

前回の続きです。

私たちが、裁判所に対して当該病院の電子カルテの記載の矛盾点について指摘した上、釈明を求めたところ、後日、病院側から、電子カルテの仕組みについての説明文書が提出されました。
ある程度予想したことではあったのですが、実際に証拠提出されたものを読んで愕然とし、また、憤りやらのいろんな感情が湧いて来ました。
まず、証拠提出された説明文書によりますと、この病院の電子カルテは、記載の途中で「仮登録」という手順を踏むと、以後は、自由に書き足したり、書き換えたり、さらには削除することができるということであり、しかも、そのような加筆、訂正、削除などの行為がいつ行われ、訂正前がどのような内容であったかは、電子カルテ上では確認できないという仕組みになっているようでした。

この点、これまで、私たちが見て来た他社の電子カルテでは、たとえば、最初の記載については「第1版」そして、いったん更新したものは、「第2版」という形で保存され、その記載を書き足したり、書き換えたりするとそれは「第3版」ということになって、パソコン画面上で確認もできますし、さらに、電子カルテ全体を一括出力するという手順を踏めば、すべてプリントアウトされるようになっていました。
しかし、この病院の電子カルテでは、そのような更新という手順を踏まずに、容易に書き換え、削除ができてしまい、しかも、加除訂正された内容も書き換えされた時刻も電子カルテ上ではまったく表示されないというのです。

私たちは、この病院の電子カルテの仕組みは、厚労省が定めた、電子カルテの真正性と見読性の原則に明らかに反していると考えています。
なぜならば、仮登録のままにしておけば、後で、いくらでも書き足したり、書き換えたりすることができてしまうことになり、しかも、そうした書き換え等がいつ行われたかがわからなくなってしまい、診療行為の内容をあとで検証することができなくなってしまい、監査等に差し支えることは明白だからです。
現に、今回、私たちが指摘した個所について病院側がデータベースをもとに行った説明では、最初の入力時点に、主治医によって書かれた診療行為に関する重要な記載が、その後3回の仮登録を経て、4回目の書き換えの際に、ばっさり削除されていました。
それは、なんと最初の入力の時刻からすると、8時間40分も経過した後でした。
その間に、病院側は、遺族に対して、「原因は不明だが、病院側に責任はない」という意味不明の説明をしているのですが、いずれにせよ、記載してから8時間以上経過後に、その記載を削除する行為は、「改ざん」以外の何物でもありません。
しかも、その間に3回も仮登録が繰り返されており、いずれの仮登録も深夜になされていることからして、主治医には、電子カルテ上に見えない形での書き換え、削除ができる「仮登録」という状態を継続しようという意図があったのではないかと疑わざるを得ません。
とにかく、この電子カルテでは、そうした仕組みを利用することで何時間経っても自由に記載の書き換え、削除ができるだけでなく、そのような書き換え、削除がなされたことが時刻も含め、電子カルテ上にまったく表示されないわけで、電子カルテシステムへの信頼の根っこから失わせる大問題といっても過言ではありません。
ちなみに、私たちがこの電子カルテの異常性に思い至ったのは、前回の記事で触れたとおり、記載中に明らかな矛盾があったことに気づいたからで、そうでなければ、どこかおかしいと感じる程度で、電子カルテの原則を踏みにじるような仕組みであるということにまではたどり着けなかったかもしれません。
逆に言えば、電子カルテの仕組みを理解しておくことと電子カルテの証拠保全に関するスキルを身に着けておくことは、医療事件を扱う患者側代理人にとってはもはや必須なことといえます。

本論に話を戻します。
とにかく、この病院のような電子カルテの仕組みだと、後からの事故の検証が非常に難しくなるわけで、もしかすると、これと同様の電子カルテシステムが導入された医療機関においては、カルテの改ざんが横行し、真相が闇に葬られてしまった医療事故が少なからずあるのではないかとの疑念さえ湧いてきますし、非常に強い憤りを覚えます。
考えてみると、電子カルテのシステムは非常に高額なので、電子カルテはシステムを構築するサプライメーカーにとっても巨額の利益をもたらすとのことですが、メーカーにとっても競争であり、どの電子カルテシステムを導入するかは病院側の判断ですから、病院側の要望(ニーズ)にどこまで応えるかということによって、そのメーカーのシステムを選んでもらえるかが違って来るということは想像に難くありません。
となると、医療事故の隠ぺいがし易いようにと病院側が望んだ場合、その要求に応えられるような電子カルテシステムを「売り」にするサプライメーカーがいても不思議ではないのかもしれません。
それともう一つ、このシステムを実際に扱っている被告病院の医療者は、記載の書き換えが容易にできてしまうことを重々承知しながら、日常の業務を行っていたことになるわけで、現場の医療者はどのような気持ちでこの電子カルテを扱っていたのでしょうか。
医療者としての良心を持っていれば、この電子カルテはおかしいと抗議の声を上げるべきだと思うのですが、現実的にはなかなか難しいことかもしれません。
ルールを踏みにじるような電子カルテのシステムは、もしかすると、医療者のモラルの崩壊を助長させるための「悪魔のささやき」なのではないかという気すらして来ます。

実は、当該事件を一緒に取り組んでくれている若手の弁護士がこの電子カルテの仕組みについて研究してくれていて非常に詳しいので、この問題について最近よく話をするのですが、この欠陥電子カルテの問題については、できるだけ早い時期に何らかの提言、問題提起をしなくてはいけないと考えています。
また、この件は、現在進行形の裁判の中でのお話でもありますので、今後も、新たな事実が判明した場合には引き続き報告させていただきます。

2018年08月18日 > トピックス, 医療事件日記
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