事務所トピックス
葵法律事務所

先日、Part1を書いてその後Part2が書けないままとなっていました、ある医療事件の証拠保全の件を取り上げます。

Part1では、電子カルテの証拠保全の現場で生じることとして、「一括出力のチェック項目に漏れがないことをパソコンの画面上で確認しても、実際には印刷の対象とならず、いちいち電子カルテに紐づけされていないものがかなりあって、しかも印刷ができないものもあり、結局、データが表示されたパソコン画面を写真撮影して保全せざるを得なくなった」という問題を取り上げました。
これは、電子カルテの証拠保全を引き受ける弁護士にとって、もはや基本的なスキルといっても過言ではありませんが、そうなると、入院期間や手術の回数によっては、それこそ膨大な時間を要することになります。
今回取り上げる気になった問題とは、そのこととも関連しますが、裁判所の対応に関することです。

実は、今回の証拠保全手続について裁判所と事前に打ち合わせを行った際に、裁判所から強く念押しされたことがあります。
それは証拠保全の終了時間でした。
その日は午後1時スタートだったのですが、担当裁判官が、「午後5時までに裁判所に戻らないといけない。したがって午後4時過ぎには終わるようにしてほしい」と強く言われました。
とはいえ、スムーズに手続が進むか否かは、病院の対応如何のところもあり、またPart1で取り上げた電子カルテの仕組みに絡んだ問題もあるので、午後4時過ぎまでに終わるということをこちらが請け合えるはずがありません。
実際、出力されないデータの保全に四苦八苦しましたし、プリンターを2台にしてもらい、フル回転させても全然印刷が終わらなかったくらいなのです。
そんな中、裁判官はぎりぎりまではいてくれたものの、最後は、残りは任意提出の扱いでということになって、印刷終了を待たずに病院から退出してしまいました。

後になって、なぜ裁判所があれほど時間を気にするのかについて弁護士同士で話し合い、考えてみました。
もしかしたら、働き方改革(この言い方が何気に胡散臭くて嫌なのですが)の影響かとか、裁判所の労働組合との関係での取り決めがあるのではないかとか、いろいろ考えてみましたが、本当のところはよくわかりません。
しかし、考えてみると、証拠保全は一発勝負なので、裁判所が時間切れで後は任意でということでは危なっかしくてお話になりません。
実際、過去には、午後8時、午後9時までかけて実施したことも幾度かありますし、その時は裁判所はちゃんと最後まで付き合ってくれました(というか、裁判所が主体の手続なので、それが本来のあり方です)。
今回の証拠保全では病院側の対応に不足な点はなかったのですが、それでも裁判所が帰る前の時点では、すべてのデータを確保することはできませんでした。

もし、午後5時までに終えなければならないというようなお役所的な対応が今後広がるということになると、予想されるカルテの量が膨大であるような場合には、それこそ午前9時から開始してもらうしかなくなるかもしれません。
電子カルテの仕組みの複雑さや問題点からすると、幾度も手術が繰り返されたりとか長期入院といった案件では全然あり得なくないお話なのです。
真相解明のための検証手続なのですから、極端にいえば、徹夜してでもやるべきケースだってあると思うわけで、どのような背景事情があるにせよ、裁判所には本末転倒とならないような運用をしていただきたいと思います。

2019年12月15日 > トピックス, 医療事件日記
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