事務所トピックス
葵法律事務所

それまで平穏な日々を送っていたのに、ある日突然刑事事件の被疑者になってしまうということは、実際、誰にでも起き得ることです。
弁護士なんて因果な商売をやっているとつくづくそう思うのです。
実際、最近当事務所で扱ったある刑事事件はまさにそのような事件であり、正直なぜこれが刑事事件になり、身柄拘束にまで至ったのかということも疑問ですし、捜査のプロセスにおける捜査機関の手法にも非常に問題があると感じました。
その事件では、努力の甲斐あって勾留請求が却下され、被疑者は早期に自由の身となれたのですが、時間的制約もある中での弁護活動は非常に難儀なものです。
というわけで、捜査のあり方に警鐘を鳴らす意味も含め。ここで取り上げてみます。

事件は、男女間のトラブルがきっかけで起きたものです。
最近親しくなった女性から、いきなり自宅に呼びつけるような連絡が入り、被疑者となる男性が女性の自宅に行ったのです。
ここからは双方の言い分が食い違うので、いったん端折りますが、男女は口論からもみ合いになり、男性が女性の首を絞めてけがをさせたということで刑事事件になります。
男性は後日自宅を訪れた警察官により傷害罪でいきなり逮捕されます。
その日、すぐに連絡が入り、接見に行き、男性の言い分を確認しました。
男性によると、女性宅に呼びつけられて自宅に行ったところ、酔っぱらっていた女性に絡まれ、興奮した女性が平手で暴力を振るって来たそうです。
そこから女性が今度は手拳で殴り掛かって来たので、さすがにそれを制止しようとして体を抑えたりしたところ、女性はさらに興奮し、足で蹴りつけるなどしたとのことでした。
そこからもみあいになって、倒れこんだものの、女性がさらに暴行しようとしたので、やめさせようとして首のあたりを抑えようとしたものの、女性がますます激昂し、怖くなったのでそのまま逃げ帰った、これが被疑者である男性側の言い分でした。
刑事事件になってしまっている以上、女性の言い分はまったく逆なのでしょうが、事件は室内で起きたものであり、直接その場面を目撃した第三者はいませんので、おそらく、女性の言い分だけでいきなり警察に逮捕されたことになります。
勾留請求が迫っているので、すぐに検察官に連絡を取り、面談しました。
「双方の言い分しかなく、正当防衛の可能性もある事件だし、男性は横浜市内で真面目に商売をしている人物なのだから、少なくとも勾留の理由、必要性はないはずだ」という意見を述べ、勾留請求を行わないよう求めました。
さらに、その日は、東京で仕事があったので、意見書作成の準備の時間的余裕が必要なため、念のためと思い、「もし勾留請求に踏み切るなら、裁判所に勾留請求の却下を求めたいので、勾留請求すると決めた時点で連絡してほしい」と頼んだところ、検察官は「連絡します」と答えていました。
しかし、午後4時を過ぎても検察官から連絡がないため、こちらから連絡をしたところ、担当事務官から、すでに勾留請求をしたとだけ伝えられました。
検察官に代わってもらい、「約束違反ではないか」と抗議しましたが、検察官からは「そんな約束はしていない」と開き直られてしまいました。
日々の業務の中では、このように足元を掬われることも時折ありますが、勾留がついてしまうと少なくとも10日間近くは身柄拘束されてしまうわけで、被疑者にとっては仕事上も非常なダメージがありますから、検察官のアンフェアな対応に本当に怒り心頭でした。
ただ、こうなった以上、裁判官との交渉にかけるしかないので、すぐ裁判所に電話し、面接を申し入れ、並行して意見書を作成しました。
面接では、裁判官に事案に関する被疑者の言い分や被疑者の抱えている事情を伝え、勾留請求を却下してもらうよう口頭でも意見を述べ、その日急いで準備した親族の身元引受書を提出しました。
その日の夜になって裁判所から勾留請求却下の連絡が入り、午後8時頃でしたが、被疑者は釈放され、身元引受人とともに無事自宅に帰ることができたのです。

早期に身柄拘束を解き、自由にしてあげることは、刑事事件を担当する弁護士にとっては非常に重要な役割の一つですが、実際、身柄拘束による被疑者の社会的不利益は非常に重大なものがあります。
被疑者段階の勾留は原則として10日間であり、さらに通常事件ではもう10日間延長ができますので、逮捕からいうと3週間以上にも及ぶことになりますし、大体が予想できていない事態ですので、この身柄拘束が社会的な意味で致命傷となることも決して稀なことではありません。
また、逮捕から勾留請求までにはわずかな時間しかないので、その間に勾留をさせないようにするための弁護活動を行うことはそう容易なことではなく、弁護士にとっても相当な瞬発力を求められます(当事務所の場合、そのような状況になれば、複数弁護士で対応することもあります)。

逆に、捜査の現状を見ると、逮捕にせよ、勾留にせよ、お役所におけるルーティーンというか、流れ作業のように手続が進められているのではないかと感じることも少なくありません。
それは、決して、捜査機関の問題のみならず、裁判所においてもしかりで、実質的に見て勾留の理由があるのか、また、勾留によって身柄拘束をする必要性があるのかを、事案ごとに裁判所がきちんとチェックしてくれていないのではないかと思うこともあります。
すべての事件で弁護士が適切かつ機を逸することなく対応できるわけでもありませんが、検討されるべき事情を裁判所に気づいてもらうという意味で弁護士の役割は大きいといえますし、弁護士が捜査機関の問題性を裁判所に知ってもらうことは、勾留制度が適切に運用されるという意味でも非常に重要なことだと思います。
とにかく、もし何らかのトラブルによって逮捕されることがあったら、いえ、もしかすると逮捕されるかもしれないという状況になったら、できるだけ早めに弁護士の助言を仰ぐことを強くお勧めします。
いったん強制捜査のレールに乗ってしまうと、そこから降りることは必ずしも容易なことではないからです。

2020年05月12日 > トピックス, 事件日記
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