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葵法律事務所

先日の記事で、コロナウイルス感染拡大の「分水嶺」のことを書きました。
特に、人口密度が高いだけでなく、交通網が発達していて活動範囲が広く、移動も頻繁な大都市圏においては、どのような対策を執っても爆発的に感染者が増えることになる「分水嶺=デッドライン」があるはずで、それを超えないようにするためには、検査の徹底が図られなくてはならないという趣旨の内容でした。
今回は、分水嶺を超えるとどうなるかにつき、イギリスでのコロナ感染の推移を検証しつつ、コロナ対応について、なすべき基本を見失っている菅政権の対応の過ちを指摘するとともに、あるべきコロナ対応について述べてみたいと思います。

あるべきコロナ対応を考えるうえで参考になると思いますので、イギリスでのコロナ感染の推移を取り上げます。
イギリスは総人口が6000万人台ですので、概ね日本の半分強となります。
加えて、日本と同じ島国であり、他国と地続きではないという共通性もあります。
そのイギリスでは、ここに来て感染力の強い変異種が見つかったというニュースもあり、年末年始をまたいで1日の感染者数はずっと5万人を超えています。
感染者数だけを単純に対比すると、まるで対岸の火事のようにも思えますが、イギリスの推移を検証してみると、決してそのようにはいえないと思います。
ざっと感染者数の推移を見て行きますと、イギリスで1日あたりの感染者数が100人台に乗ったのは去年の3月12日ですが、1000人台に乗ったのはそれからわずか9日後の3月21日です。
現在の日本の1日あたりの最多感染者数である4000人台ですが、前述のとおり日本の総人口はイギリスの2倍近いので、4000人の半分にあたる2000人にイギリスが到達したのがいつかを見てみると、3月26日となります。
つまり、1000人台になってわずか5日後なのです。
さらに、3月31日には3000人台、4月3日には4000人台、そしてその2日後の4月5日には5000人台になっています。
要するに、2000人台から5000人台に到達するまでにわずか9日しかかかっていないことになるわけです。
これを日本に当てはめれば、4000人台になったのが12月31日ですから、1月9日に1万人に達することになります。
もちろん、当初から急激に感染者数が増えた欧州の一角であり、検査数も異なるイギリスとの単純比較はできませんが、この急激なネズミ算式な増え方こそがコロナ感染の恐ろしさです。
前にも書いたとおり、コロナ感染の厄介なところは、無症状の感染者が自身の感染を自覚できないまま感染を広げてしまうことであり、そうである以上、人口が密集するエリアでは、一定のラインを超えれば加速度的に感染者数が増加するであろうことが容易に想像できるからです。
イギリスに限りませんが、世界中で感染者数が加速度的に急激に増加してきたという現実を見るにつけ、超えるとネズミ算式に急激に感染者が増えることになる「分水嶺=デッドライン」なるものが存在することは間違いないでしょう。
ちなみに、その後のイギリスにおける感染者数の推移を見ると、しばらく数千人台が続き、夏場にかけていったん感染者数が落ち着きを見せますが、秋に入って再び増加し、10月に入ると1日あたりの感染者数は1万人台から一気に2万人台となり、11月には3万人台となって、12月の下旬には5万人台に到達しています。
今のイギリスの数字を人口比で日本に当てはめますと、1日あたりの感染者数は10万人を超えることになるわけですから、そう考えただけでも本当に恐ろしい話です。
あくまでも統計的な比較ではありますし、イギリスでの最近の急激な増加は、感染力が強いとされる変異種の影響かもしれませんが、とにかく、コロナの場合、感染が急激に広がり始めると、そこからわずかな期間で桁違いの感染者数になってしまうであろうことを念頭に置いて政策を考えなくてはなりません。

翻って日本の状況を見ますと、感染者数がここに来て右肩上がりで増加しています。
夏場の8月の増加は措くとして、10月以降で見て行くと、11月5日に1000人台、11月18日に2000人台、12月17日に3000人台、12月31日に4000人台、そして1月5日は4900人強とイギリスほどではないにせよ、十分に急激な増加傾向といえます。
中でも、東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)の増加は顕著です。
それは、検査数との対比でみても明らかです。
ある報道によると、東京で大みそかに1300人台を記録していますが、これはその2日前の検査結果を反映したものとのことで、その日の検査数は1万件を超えていたそうです。
それに対し、1月4日の800人台の感染者数は、その2日前の検査数が3000人台であったとのことですので、対比すると、もし1万人規模で検査が実施されていれば、2000人を優に超える人数がはじき出された可能性があることになります。
もちろん、このような検査数との単純比較の信ぴょう性については異論があるやもしれませんが、問題なのは検査数が少なすぎるということであり、そのため、本来把握され、移動が制限されるべき無症状の感染者が野放しになってしまっているであろうということなのです。

ところで、このような急激な感染者数の増加を受け、菅政権は、国民からの非難と支持率の急激な低下に恐れをなしてか、Go toを止め、緊急事態宣言の発令を決めました。
もっとも、現時点までで示されている今回の緊急事態宣言の内容を見ると、飲食業については午後8時までの営業自粛を強く求めるようですが、それ以外の業種や、当面の国民生活に影響のあるものについては、どうやら幅広い規制をかけない方向で検討しているようです。
しかし、それではあまりに中途半端で効果は乏しく、またずるずるとコロナ感染が遷延化して行くことは避けられないと思います。

本気でコロナ感染を封じ込めようというのであれば、執るべき基本政策は二つに一つでしょう。
一つは、1か月間のロックダウンです。
生活必需品の購入などのための外出を除き、また医療や福祉、役所などの欠くべからざる生活インフラに携わる人を除き、すべての外出を制限するという方法です。
感染から治癒までが概ね2週間とすると、仮に家族の中に感染者がいたとしても、2クールで治癒させることができますし、無症状の人は外出しなければ他者に移すこともないわけです(もちろん、症状の出た人は病院に行くことになります)。
その場合、外出が制限されるすべての国民に対して、一か月分の生活費や避けられない支出を補償することがセットとなります。
もう一つの方法ですが、ロックダウンほどの厳しい制限をかけず、移動や接触を許容するというのであれば、その代わりに徹底したPCR検査の実施を義務付けるという政策をセットにします。
何度も指摘しているとおり、無症状で無自覚な感染者が外出して他者と接触することを容認している限り、感染拡大は避けられません。
したがって、もし、外出を強く規制しないというのであれば、最寄り駅などでのPCR検査を義務付けるなどして、検査を移動、外出の条件とするほかないと思うのです。
特に、東京圏、大阪圏など、県境をまたいでの移動が当たり前の大都市圏では、徹底した感染の洗い出しが不可欠です。
検査は、規制の実施に伴い、2~3週間の間を置いて2回行えば足りるでしょう(もちろん、感染者の濃厚接触者についてはそれとは別に実施すべきですが)。
ほかにも医療への手厚い補助など、組み合わせるべき政策はいろいろとあいますが、基本とすべきはこのいずれかの政策を措いてほかないでしょう。

とにかく、今の政府の中途半端なやり方ではコロナを短期間で収束させることは不可能です。
特に、東京圏ではすでに潜在的な無症状感染者が激増しているので、感染者の徹底した洗い出しもせず、中途半端な規制を行うだけでは、無症状で無自覚な感染者が他者と接触するということを防げず、今後、一気に爆発的な感染増となる可能性が高いし、地方への波及も防げません。
国会議員の人たちには、党派を超えて、一刻も早く、その場しのぎではなく、コロナの徹底的な封じ込めにつながるような政策を決め、それを実行してもらいたいと強く望みます。

2021年01月05日 > トピックス, 日々雑感
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