事務所トピックス
弁護士 折本 和司

Part1からの続きです。

 

今回の不祥事への対応で、さらに問題とされるべきは高野連などの関係団体の対応です。

本件が1月時点に発覚したにもかかわらず、広島の高野連は広陵高校側の報告を鵜呑みにした形で、厳重注意という、実質的に何の処分にもならない対応をしたわけですが、それこそが今の高校スポーツ界の不健全さの表れであり、その結果、重大な人権侵害やそれを引き起こす部活の病巣のようなものがが見過ごされるのであれば、高野連はいったい誰のためにあるのか、その存在意義が問われても致し方ないと思います。

そもそも、曖昧でなあなあな処分を決めた広島の高野連の副会長が広陵高校の校長であるということ自体、処分の公正さについても、組織が正常に機能しているか否かについても、重大な疑義を生じさせます。

特に本件の場合、被害者の言い分と食い違う内容での報告がなされているわけで、広陵高校の校長はそのことを知らなかったはずはないので、少なくとも被害者の言い分と両論併記で高野連側に報告することはできたはずです(もちろん、件の報告書が本物で、加害生徒から聞き取った内容が書かれていたというのであれば、虚偽報告の責任はより重大です)。

しかし、広陵高校の校長(兼高野連副会長)は、それすらしないで野球部の活動に有利になるような報告を行い、その結果、広島の高野連が春季大会、夏の予選への出場に支障のない処分で済ませたわけですから、高野連の自浄能力に疑問符が付くのは当然のことといえます。

調べてみると、地域の高野連は、地域の有力校の指導者らによって構成されているようであり、となるとこの種の事案については、明日は我が身で自ずと身内庇い的になったり、有力校や強い発言権を持つ理事らに配慮した不公正な結論になることは、今回に限らず、十分に起こり得ることかもしれません。

となると、高野連という組織自体が、その役目を忘れ、形骸化している可能性も否定できませんし、高野連の組織運営のあり方そのものが問い直される必要があります。

たとえば、不祥事の調査や処分の判断の過程については、有力校や強い発言権を持つ理事の影響を排除し、中立な外部の委員を入れて一定の強い調査権限を与え、独立した調査と審査が保障されるような仕組みを作ることや、そこでの調査結果や処分に関する意見が尊重されるようにしておくことは必須でしょう(もちろん、一方で、責任の取り方が旧態依然たる連帯責任になっているのも時代錯誤であり、より柔軟な対応が検討されるべきですが、逆に事実を隠蔽したり、矮小化した場合はより厳しい処分にすることも検討されるべきでしょう)。

仮に、そうした改革すらできないというのであれば、高野連の自浄作用には期待できないことになるので、スポーツ裁判所のような外部組織によって、不祥事に関する申立について調査、判断するというような制度を構築していくべきと思います(医療事故については医療事故調査制度というのがありますが、似たような枠組みにするのがよいかもしれません)。

 

とにかく、今回の事件は、今の高校野球が非常に根深い問題を抱えているのではないかという疑念を社会に知らしめました。

サッカーに押され気味とはいっても、野球はアマチュアからプロに至るまでに様々な利害が絡んでいる巨大ビジネスの領域です。

中でも高校野球は、甲子園に出て活躍することが、選手のみならず、指導者、学校にとってもメリットが大きく、学校によっては至上命題となるため、それだけに、彼らにとって甲子園に出るうえで不都合な不祥事は表沙汰にしたくないという動機が働きやすくなります。

しかし、起きた不正を正さず、不正の温床を見て見ぬふりをして野放しにしてしまえば高校野球に未来はないし、そうなるか否かは、ここできちんとした改革を実施できるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。

 

自浄作用ということでいえば、共催に名を連ねる朝日新聞、毎日新聞の責任も重大です。

今回の問題でも両社の報道は及び腰という印象を強く受けました。

組織の不正に切り込んで真実を報じる公器としての責任を負っているマスコミが、自社の利害に絡む局面になると途端に控えめになってしまうというシーンはフジテレビの時にもありましたが、本当に情けなく、強い憤りを覚えます。

主催者側であればこそ、なおのこと襟を正して、踏み込んだ調査と報道を行うべきだし、それすらできないというのなら両新聞社とも高校野球からさっさと手を引くべきです。

甲子園を夢見る青少年が大人の都合や思惑で食い物にされ、不当な扱いを受けることを放置してはならないし、巨大な利権が絡むからこそ、覚悟を持って真相解明と改革がなされるべきです。

 

元野球少年として、高校野球が原点に戻って子供たちの夢見るに相応しい場所になることを心から願ってやみません。

2025年08月30日 > トピックス, 日々雑感
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