事務所トピックス

医療事件日記~鑑定意見書完成!

葵法律事務所

〇月✖日
ある医療事件がいよいよ提訴直前となっているのですが、その事件の準備段階における最後の関門が、鑑定意見書の作成でした。
事件そのものは、相談する医師が異口同音に「ひどい」とおっしゃられるほどの、重大な死亡医療事故案件なのですが、輪をかけてひどいのが事故後の医療側の対応で、医学的に矛盾だらけの責任を否定する内容の書面を事故直後にご遺族に送り付けてくるという厚顔無恥ぶりだったのです。
医療側のそうした言い訳が裁判所で通用しないことを明確にしておくために、訴訟提起前の段階で、専門医の方に鑑定意見書をお願いしたという経緯がありました。
お願いした専門医の方は、経験も豊富で、またスタンスとしても極めて中立公正な方です、
実際、出来上がった鑑定意見書は、とても論理的であり、かつ医学的根拠が明確となっていて、非常に説得的な内容となっています。

ところで、鑑定意見書を訴訟提起前に準備するかどうかは、患者側代理人にとっては悩ましいところもあって、ケースバイケースの判断ということになります。
そもそも意見書をいただくまでもないと判断する場合はありますが、逆に、訴訟前の段階では、医療側の言い分がどうなるかはっきり見通せない場合もあり、そういう事件では、訴訟提起後に争点が明確になってから作成をお願いするほうがいいと判断することもあるわけです。
また、鑑定意見書の作成のためには数十万円程度の費用が掛かりますので、依頼者の経済的な事情も考慮してあげなければならないということもあります。
ただ、訴訟提起段階で、専門医の医学的知見に基づく説得力のある意見書があれば、早い段階で裁判官が事件の真相を理解してくれることもあり、早期決着が期待できるというメリットもあります。
今回の事件では、まさにそのような判断のもとに、訴訟提起前の鑑定意見書の作成に踏み切ったというわけです。

今回の事件では、これから訴状を完成させ、近々提訴の運びとなります。
この事件に関しましては、医療事故の背景に、事故を引き起こすような医療機関の発想、さらにいえば、現在の医療に潜む病巣のような問題があるのではないかというとらえ方をしておりますので、訴訟提起後においても、ご遺族の了解を得られれば、可能な範囲で裁判の経過についても報告していきたいと思っています。

2017年03月24日 > トピックス, 医療事件日記

医療事件日記~ドクトルマンボウの本当の死因と解剖実施の必要性

葵法律事務所

〇月✕日

友人の弁護士から相談を受け、調査段階で少しお手伝いをしていた医療事件が無事解決の運びとなったとの連絡が来ました。

その事件は、当初、ある病気で入院し、いったん容態が回復した後、病室で急変したというもので、うっかりモニターの電源を切ってしまっていたため。病院側が急変に気付くのが遅れ、患者が死亡されたというものでした。

ただ、その事故では解剖が実施されなかったため、死因が特定できず、元々の疾病で死亡された可能性も残ることから、モニター電源が切れてなかったとしても救命できたかどうかについてなかなか確証が得られないという状況に陥っていたのです。

相談を受けて、紹介した医師の方から有益な意見がうかがえ、また鑑定意見書を書いていただけたこともあって、訴訟に踏み切り、このたび、死亡についてある程度の責任を認めるレベルの解決に達することができたということでした。

和解内容をうかがいましたが、解剖を実施しておらず、死に至るまでの機序について本当のところがわからない事件としてみると、かなり良い解決になっているのではないかと思いましたし、相談を受け、多少なりお手伝いした事件でしたので、ちょっとホッとした次第です。

ただ、それでも、やっぱり解剖をしておけばよかったのになあという思いは残るわけです。

解決の水準ということもありますが、真相がより明らかになった可能性は高かったでしょうし、真相解明のための苦労も相当違って来たはずだからです。

その方の事故の場合、なぜ解剖に至らなかったかはよくわかりませんが、現実に医療事故の相談を受ける立場から振り返ってみると、ミスをした医療者側に、何とか解剖をさせないように説得しようという心理が働き、そうした説得の結果、解剖がなされないままで終わってしまうケースも決して少なくないように思いますし、現にそうした印象を抱かざるを得ないことは時折あるのです。

 

少し前のお話になりますが、戦後を代表する作家として知られるドクトルマンボウこと北杜夫さんが亡くなられた時のことが後になって報道されています。

北杜夫さんといえば、戦後の日本文学史において、軽妙な文体で、ある時期、狐狸庵先生こと遠藤周作さんと人気を二分した作家です。

その北杜夫さんが亡くなってしばらくして、当時医師から説明された死因が嘘だったことが明らかになります。

その時のニュースによりますと、死亡時には、「腸閉塞から敗血症性ショックになって死亡した」という説明だったのが、後になって、「吐物誤嚥による窒息死」が本当の死因であることが判明した、つまり死亡時の説明が嘘だったことがわかったというのです。

どうしてそのようなことが表に出たのかはわかりませんが、もしかしたら内部告発のようなことがあったのかもしれません。

いずれにしても、腸閉塞から敗血症性ショックになってしまった場合よりは、吐物誤嚥による窒息死であった場合の方が、ケースにもよりますが、医療側の責任が問われる可能性は高くなるように思われますので、病院側は、ご遺族からの責任追及を恐れて死因について嘘の説明をしていたのかもしれません。

ただ、このニュースでより注視すべきことは、解剖に関する病院側の対応だと思います。

報道によれば、解剖を実施するかどうかの話し合いの際に、医師が、「解剖をやるとすぐに帰れなくなる。ガッと開けるから見栄えのこともある」などと説明したため、遺族は解剖を断念したという経緯があったそうです。

もちろん、解剖をやっていれば、吐物誤嚥による窒息死であることはすぐに明らかになりますので、死因の説明が嘘である以上、それがばれることを恐れての説得であった可能性が高いように思われます。

医療事件では、過失だけでなく、その過失のせいで悪い結果が生じたかどうか、つまり因果関係の方がより重要になって来るケースは少なくありませんが、死亡事故の場合、そのための重要な情報が解剖所見であり、それゆえ、死亡事故の場合、解剖を実施しないと、どうして亡くなられたのかがわからず、責任を問えないで終わってしまうことになりかねません。

北杜夫さんの場合のように、後になって真相が表に出ることはほとんどないことですので、死亡事故で死因とかに納得できないような場合には、大切な家族を亡くされたご遺族にとっては難しい選択かもしれませんが、解剖をして死に至る機序を確認しておくことが真相究明のために必要ことだということを申し上げておきたいと思います。

2017年02月15日 > トピックス, 医療事件日記

医療事件日記~電子カルテの証拠保全

葵法律事務所

〇月✕日

昨年中に申し立てていた医療事件の証拠保全期日がやって来ました。

前にも述べましたとおり、医療事件の証拠収集、調査においてカルテ類の入手は必要不可欠な手順なのですが、事件の内容がよほどシンプルなものでない限り、多少の費用が掛かっても、裁判所の証拠保全手続でカルテ類の確保に努めることが望ましいとはいえます。

 

ところで、今回の証拠保全においては、私たちは相手方の病院が電子カルテを導入していることを把握していました。

最近は、ある程度の規模の病院になると、電子カルテを導入していることがかなり多くなっています。

ただ、電子カルテということになると、証拠保全期日における段取りや留意点も、以前のやり方と大きく異なって来ています。

前は、代理人は記録と補助のカメラくらいを用意しておけばよかったのですが、電子カルテとなると、パソコンやDVDドライブ、ブランクのCD、DVDの持参は必須になります。

その場で、画像、映像を確認したり、病院側にダビングしてもらうこともあるからです。

さらに証拠保全の手続中のやりとりでは、かなり高い緊張感で臨まないといけなくなっています。

変な言い方になりますが、ボヤーッと病院任せにしたり、裁判所任せにしたりしていると、あっという間に終わってしまいます。

こちらが意識的に取り組まないと、保全すべき重要な情報が出て来ないままで終了なんてことになってしまうので、裁判所や病院の担当者に対してあれこれ口を挟み、パソコンの画面の向こう側に隠れている情報を引きずり出さなくてはならないのです。

ですので、以前の紙やフィルムベースで、同行した写真屋さんにパシャパシャ写真を撮ってもらう証拠保全に比べ、時間は短いのですが、緊張感を持って、パソコンの画面と向き合い、画面操作をする職員に質問をぶつけて行かないとならないので、終わった時は、本当にぐったりしてしまいます。

 

もう一つ、今回の病院の場合、どうやら自前の電子カルテを構築しているらしいという事前情報がありました(どこの電子カルテを導入しているかを調べることは、電子カルテを保全する場合に心がけておいた方がいい準備行為の一つともいえます)。

日本国内の電子カルテの最大手は、シェア的には富士通がトップだそうで、実際、証拠保全に行ってみると、わりと見覚えのある電子カルテの形式に出くわしたりするのですが、今回の病院の電子カルテが自前のものだとすると、かなり注意をしなくてはならないということもあり、正直、普段よりも緊張して手続に臨んだわけです。

電子カルテの保全については、更新履歴、更新前情報を保全するとか、スキャンで取り込んだ紙ベースのデータ(たとえば、前医からの診療情報提供書や説明同意書の類なんかがそうです)がある場合、紙ベースの原本を保全するとか、まあ、いろいろと気をつけなければならないポイントがありますが、独自の電子カルテだとすると、そのあたりの確認がすんなりできるかということもあって、病院側や、場合によっては裁判所とも揉めるという事態が起きるなんてこともあります(よくわかってないのに、仕切りたがる裁判官が相手となればなおさらです)。

 

手続を始めてみると、事前情報どおり、今回の病院は独自の電子カルテを構築していました。

しかし、予期に反して、その病院の電子カルテは、わりとオーソドックスな作りになっていて、こちらが求めた資料はさほど揉めることもなくすんなり出て来ました。

事故の過失はかなり重大だし、事故発生後に事故隠し的な対応があったので、そうしたことからも心配な点はあったのですが、電子カルテについては、病院内の連携も含めて、とても良く出来ているように思いました。

私たちもいろいろと電子カルテを見ていますが、大手の業者の作るものとそん色ないのではないかとさえ思いました(まあ、日常の医療行為の場面での使い勝手についてはわかりませんが)。

ともあれ、現場でパソコンの画面と向き合っていろいろと検証を重ねると、どうしても漏れているデータが結構出て来るわけで、こちらの質問や要求に対して、嫌な顔をされることなく丁寧に対応してくださった病院の職員の方々には感謝申し上げたいと思いました。

 

で、実は、近々、もう一件、証拠保全期日が入っています。

何かあれば、またご報告したいと思います。

2017年02月06日 > トピックス, 医療事件日記

医療事件日記~セカンドオピニオンを求められたある医療事故のこと

葵法律事務所

〇月✕日

ある医療事件でセカンドオピニオンを求められるということがありました。

事件は、ある病院における死亡事故です。

背景には、先行する病院内での事故があり、ご遺族は当初、そちらの事故のせいで死亡するに至ったのではないかと強く疑っていました。

しかし、最初に依頼した法律事務所においては、先行する事故と死亡との医学的な因果関係の立証もできそうにないということで、調査が行き詰っていたのでした。

ただ、ご遺族としては、それでは納得できず、私たちのところに相談に見えられたのです。

 

お話を伺っても、すでに任意開示で入手済みのカルテを読み込んでみても、最初はもやもやとしていて五里霧中という印象でしたが、検討を進めて行くうちに、死亡に至った原因が先行する事故とは無関係の別の医療行為だったのではないかという疑問に行き当たりました。

協力医が、死亡直前のCT画像を解析してくれた結果、依頼者の親御さんの死亡には、病院の医師による別の重大な過失が関与している可能性が高いことが明らかとなったのです。

この点については複数の協力医に相談したのですが、いずれの協力医も同意見であり、その結果、死後における病院側の説明がまったくのでたらめだったことが判明しました。

 

現在進行中の事件でもあり、内容につき詳細な説明はいたしませんし、現時点では「過失」の存在が明らかになっただけで、死亡に至る医学的機序を解明し、因果関係について検討して行かなくてはならないという課題もあるわけですが、セカンドオピニオンを求めて来ていただいたことに対して、真相解明に多少なり力を貸せたことはとてもよかったというか、ちょっとホッとしています。

また、前に依頼していた弁護士の名誉のために申し上げておくと、そちらでも熱心に事件に取り組んでおられたし、調査に特段の齟齬はなかったと思います。

ただ、やはり、難易度が高めの医療事件を扱うについては、弁護士の側にもある程度の経験値が必要ですし、また、労を厭わず事案を検討してくれる協力医の存在が必要ですので、そうしたこともあって、今回は病院側の説明と異なる真相に辿り着くことができたのだと思います。

 

セカンドオピニオンの有用性についてはこのホームページの別の場所でも触れていますし、それは実は医療事件に限ったことではないのですが、もし依頼している事件について行き詰ったり、疑問を感じるようなことがあったりするようでしたら、別の弁護士にセカンドオピニオンを求めてみるということは、局面の打開、あるいは依頼事件についての納得を得るという意味でも価値のあることだと思います。

ぜひご検討ください。

2016年11月22日 > トピックス, 医療事件日記

医療事件日記~協力医と一緒に冠動脈カテーテルの映像を検証する

葵法律事務所

〇月✕日

医療事件の真相解明に協力してくださる協力医の方との面談に出かけました。

今回は循環器内科の専門医で、これまでも散々お世話になって来た方です。

通常であれば病院におうかがいするのですが、今回は日程的なこともあったので、ちょっと無理を申し上げたところ、休日にお時間を作っていただけることとなり、ご厚意に甘えてご自宅にお邪魔することとなりました。

案件は、心臓の冠動脈のカテーテル治療に伴って生じた事故に関するものです。

医療事件の中でも、内臓系、とりわけ、脳や心臓に関するものは非常に難易度が高く、専門医の頻繁な助言が欠かせません。

今回の相談の主目的は、証拠保全で入手したカテーテル治療の映像を観ながら、治療中に生じたトラブルの経過について分析してもらうことでした。

カテーテル治療中は、背中の側から放射線を照射しながら、造影剤を入れた冠動脈に挿入したカテーテルやワイヤーが病変に到達しているか、バルーン拡張、ステント治療が奏効しているかなどを確認し、ポイントポイントを映像として保存するというのが通常の手順ですのです、その映像をチェックしてみようというわけです。

正直、証拠保全で入手した映像を私たちが見ても、黒っぽい影がもぞもぞと行ったり来たりしているようにしか見えず、冠動脈のどの血管を写しているのか、どこに病変部位があるのか、医師が具体的にどのような手技を実施しているのかといったことを正確に理解することはできないわけです。

また、今回の相手方病院では、カテーテル治療の記録が経時的にきちんと記録されていないということもあって、協力医の方でも、あとで書かれたカルテの大雑把な記載を手掛かりにしつつ、映像画面を行きつ戻りつしながら分析してもらうという作業になりました。

結局、この日の3時間にも及ぶ検証により判明したのは、カテーテル治療中に、病変部位の近くからさらに枝分かれている別の血管に血栓が詰まってしまい、その血管が塞がれてしまったことと、それに気づいた施術担当の医師がその血管にワイヤーを通そうとして四苦八苦しているうちに、別の血栓が主要な血管を塞いでしまったということでした。

このような協力医の助言により、真相解明の第一段階として、カテーテル治療中に何が起きていたのかの事実経過を把握するという、相談の主目的については十分達成することができたのですが、相談が長時間に及んだにもかかわらず、嫌な顔一つされることなく熱心に対応いただいた協力医の方には本当に感謝しかありません。

事件の法的な検討についてはこれからが本番ですが、共同受任していた弁護士とともに、心地よい疲れを感じながら帰途につきました。

2016年11月06日 > トピックス, 医療事件日記
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