事務所トピックス

事件日記~最近当事務所において解決した、ある交通事故案件についてのご報告

葵法律事務所

弁護士は、事案に応じ、局面に応じ、様々な選択をしなくてはなりませんが、その中で大変なのは、新しい法律知識や判例の検討はもちろん、実務の動向にも気を付けなくてはならず、実は、それが落とし穴になることがあるということです。
最近扱った、ある交通事故の件がその好例といえますので、今回はその事件を取り上げてみます。

事件は、高齢の女性が横断歩道上を渡っていたところ、広い交差点であったため、青信号で渡り切れず、赤信号になってしまい、前を見ないで突っ込んできたバイクに撥ねられ、高次脳機能障害になったというものですが、この事件の加害者の男性は自賠責保険にしか入っていませんでした。
自賠責で支払われる額は、通常、任意保険よりもかなり低額になることが多いのですが、この事件では、たまたま、依頼者の息子さんが別の総合保険に入っていて、家族が人身傷害の被害を受けた場合も一定の補償を受けられるようになっていましたので、症状固定後、自賠責の被害者請求を行い、さらに当該保険会社からの条件提示を受けるに至りました(実際にはそれまでも紆余曲折はあったのですが)。
提示された条件は、検討してみると、加害者が任意保険に入っていた場合に比べ、やはり低額なものでした。
そこで、当職らは加害者に対して損害賠償請求訴訟を提起することとしたのです。
この点がポイントなのですが、この提訴の主目的は、資力の乏しい加害者から賠償を得るということではなく、人身傷害特約付きの保険契約を締結している損害保険会社から上乗せの保険金の支給を受けるというものでした。
実は、平成24年ころに保険実務が変更になったことで、被害者側が、加害者側に対して、訴訟を提起し、裁判所での和解もしくは判決で損害額が確定した時点で、上乗せの金額が支払われる場合があり、本件ではそれを利用してみる価値があるということで、訴訟を提起することとしたのです。
訴訟先行型と呼ぶのですが、つまりは、この制度を知らなければ、保険会社側が提示した金額をベースとした解決で終わってしまうことになるわけですから注意が必要なわけです。

訴訟になれば、事故態様からして、裁判所から早期の和解案提示がなされるのではないかと想定していましたが、実際には加害者側の代理人が、事故態様、過失割合等を正面から争ってきたことから、事故態様の立証などにエネルギーを割かなくてはなりませんでした。
確かに、加害者側としては、保険会社から将来求償を受ける可能性がある以上、損害額を減らしたいと考えるのは当然でもあり、このあたりはやむを得ないところでもありました。

ただ、この事件は、途中から様相を変えました。
加害者の代理人が、急に、破産申し立ての検討を始めたと伝えてきたのです。
そこで、保険会社側に確認するなどして検討したところ、破産が先行してしまうと、加害者側への求償が難しくなるため、当初の提示額にとどまってしまうという話が出てきたので、そこからは、一方で保険会社側から規約の提示を受けたりしながら、他方で、裁判所や加害者側との折衝を行うという両面対応を余儀なくされました。
結論的には、加害者側が破産申し立てをする前に、和解を行うのであれば、上乗せ額が支払われるという点を保険会社側に確認したうえで、裁判所に和解提案を求め、加害者側もそれを了承して、和解に漕ぎつけ、無事に解決に至りました。
保険会社の当初の提示額よりも1000数百万円程度の上乗せとなり、訴訟先行型の実を得られる解決となり、我々としても胸を撫で下ろしました。

交通事故に遭った時、加害者が任意保険に入っていないため、十分な賠償を受けられないというケースは、遺憾ではありますが、決して稀なことではありません。
そのことについて思うのは、事故のほとんどは過失によるものですが、任意保険に入らず、車を運転するというのは、「故意」であり、そのこと自体が厳しく罰せられるべきではないかということです。
なぜなら、大部分の運転者にとって、避け難いような状況で起きた事故であっても、ひとたび事故が起きれば、何らかの過失を問われることがあり得ますし(特に歩行者相手の事故についてはそういえます)、そうである以上、十分な賠償がされるための任意保険への加入は、「任意」ではなく、運転者の基本的な義務といえるからです。
ただ、実際は、任意保険に加入していない、さらには自賠責にすら入らず、ハンドルを握っている人が少なからず存在します。
そんな人がいったん事故を起こせば、被害者のみならず、加害者やその家族にとっても時に一生を左右しかねないほどの経済的な重荷を背負うことになるのです。
そうである以上、被害者側にとっても、別の損害保険に入って、人傷特約を結んでおくことは、いざという時の備えになりますし、本件であらためてそのことを痛感しましたし、弁護士としても、そのような事件に遭遇した場合には、保険の規約を精査し、それを最大限生かすような活動をしなくてはなりません。
なお、これも訴訟の中で知ったことですが、一言で訴訟先行型といっても、保険会社から受けられる保険金額は、会社によってその計算方法がかなり違っていますので、この点でも注意が必要です。
ともあれ、人生、いくつになっても日々勉強です。

2024年01月23日 > トピックス, 事件日記

医療事件日記~中心静脈カテーテル(CV)挿入の際の血管損傷による死亡事故の解決のご報告Part1

葵法律事務所

本件は、以前、当ホームページでも、事故後の院内調査が極めて不十分なものであったことについて医療事故調査制度のあり方との関係で取り上げた症例です。
事故の内容について概要で申し上げますと、中心静脈カテーテル(CV)の挿入の手技を試みた際に、誤って主要動脈を損傷し、その日のうちに出血性ショックで亡くなられたという非常に痛ましい事故です。
事故後の院内調査が杜撰なものであったことについては、繰り返しとなるので、本稿では中心的に述べません。
以前の記事をお読みいただければと思います。

同事故についてもう少し詳しく述べますと、それは、ある総合病院で、若い医師が鼠径部(足の付け根あたり)からのCVカテーテル挿入を試みたもののうまく行かず、約10回もの穿刺を行うも成功せず、穿刺針を長い針に変更して穿刺を終えたところ、術後に、血圧の急激な低下や皮下血種形成が確認されるなどの事態が起きていたのに、医療介入されることもなく、その後急変し、死亡に至ったというものでした。
ところが、事故直後の説明では、このような経緯を経たにもかかわらず、「COVID-19による感染症の増悪によるもの」との説明がなされています。
確かに、入院のきっかけは新型コロナウイルス感染でしたが、その説明に遺族が疑問を持ったことから、画像診断が実施され、その結果、骨盤内に血種様の所見が確認されたことから、解剖が実施されて右下腹壁動脈損傷による出血性ショックが死因であることが明らかとなったのです。

本件事故では、患者さんがなくなられるまでの医学的機序はほぼ確定できたのですが、ポイントは、鼠径部へのCV挿入の際に、手技の過失があったか否かという点と、術後の管理という点での落ち度が認められるかという点にあると考えました。
鼠径部への挿入の手技については、鼠経靭帯よりも頭側での挿入は動脈損傷のリスクが高いので避けるべきというのが、協力医の見解でもありました。
ただ、この点について病院側の代理人は過失を明確に認めないのです。
実際には、本件でCV挿入を実施した医師は研修医であり、臨床経験が足りませんし、実際に生じた結果からみても挿入部位を誤った可能性は高いといえるのですが、鼠経靭帯より尾側での挿入であっても、挿入の角度によっては下腹壁動脈等の損傷を引き起こす可能性がないとまではいえません。
このあたりについては、事故から学ぶべき教訓であったり、医療過誤の主張立証責任のあり方という問題もありますので、Part2で取り上げます。
ただ、いずれにしても、血管損傷があっても即出血性ショックで死に至るわけではありません。
実際には、体内を循環する血液量が減少していくため、脈拍数や呼吸数が増加し、末梢への血流不足でチアノーゼになるなどのいわゆる代償性ショックとなり、それから非代償性ショックへと移行して行きますし、その間には一定の時間を経るので、代償期に医療介入していれば、十分に救命は可能であり、本件事故でも、CV挿入後の異変に気付いてすぐに介入していれば救命できた可能性は高いといえるわけです。
このような二段構えの指摘を受けて、最終的には病院側も責任を認め、死亡の責任を認めたと評価できるレベルの示談解決を図ることができました。
また、示談にあわせて病院側からは、謝罪と再発防止を約束する内容の書面を受け取ることもできました。

何度も書いていることですが、民事事件で責任を認めての早期解決は、医療側にとっても決して大きな負担とならず、ミスを犯した医師の方にとっても、早期に、ミスを教訓にして前向きに医療に取り組める機会が訪れるわけですから、医療側でも、いたずらに構えて、黒を白と言い繕うのではなく、民事事件で早期解決を図ることの意味を前向きにとらえべく発想を変えていただければと思う次第です。
なお、本件で教訓にすべきことはほかにもあると思うのですが、長くなりますので、Part2に続きます。

2023年11月09日 > トピックス, 医療事件日記

事件日記~将来の相続への備えのお話

葵法律事務所

高齢化が進んでいる影響もあるのでしょうが、ここのところ、当事務所でも相続開始後の遺産分割だけでなく、遺言や将来の相続に関する相談や依頼が多くなっているように感じます。
遺言だけでなく、いつか必ずやって来る相続という事態に、前もって備えておくことは、せっかく蓄積してきた財産を次の世代のために残せば、大切な人たちの生活を安定させることに繋がりますし、親族間の無用の紛争を回避できることにもなります。
ところで、将来の相続への備えといっても、相続それ自体への備えと、将来納めることになる相続税への備えという問題があります。
というわけで、このあたりの考え方を整理しつつ、ポイントになりそうな点についてご説明してみたいと思います。

相続税対策とは、端的に言えば、将来の相続税の申告の際に納める相続税を少しでも減らして相続人等に少しでも多く残すための備えということになります。
今の政治が、国民から巻き上げた税金を一般国民のためにちゃんと使ってくれていないという現状も考えれば、国民としてはなおさら無駄な税金は払いたくないところでもありますが、なんにせよ、遅かれ早かれ必ずやってくる事態への備えをしっかりやっておくかどうかで、納める税金が大きく違ってくる場合があることは間違いありません。
一方、全体的な相続対策は、たとえば、自分が死んだ後に子供たち同士でいがみ合わないでほしいであるとか、逆に、自分の世話を一生懸命やってくれた人に多く残したいとか、あるいは、残された人の将来を心配して憂いなくしてあげたいとか、相続税を少なくするということ以外にも、様々な動機があり、あらかじめ何ができるかをより広い観点で検討しておくべきものです。
仮に相続税の基礎控除の範囲内に収まる遺産しかなく、相続税を納める必要がないとしても、いざ相続となれば、相続人間で揉めることはいくらでもあることですから、そうならないためにも、相続対策をやっておく意味はやはり大きいといえるわけです。

ただ、この相続税対策と相続対策は、一応区別できるものの、実際には関連し合っているところがあります。
相続税対策が相続対策になっているところもあれば、逆に相続税対策として行ったことが相続にいろいろと影響を及ぼすこともあります。
したがって、具体的に何が可能か、何をしておいたらいいかは、総合的に考えておく方がよいといえるわけです。
相続税に限りませんが、税の仕組みや運用は、しょっちゅう変更されたりしますし、かなりテクニカルなところもあり、本来は税理士さんの領域です。
一方、相続対策は、生前中の権利調整をしておいた方がいい場合や遺言の作成の必要も出てきたりとかで、トータルに考えておいた方がいいところもあるので、こちらについては弁護士の領域といえます。
まあ、経験が一定以上ある方であれば、弁護士でも税理士でもどまちらでもいいといえますが、それぞれの強み、弱みもあり、視点や発想の違いもあるので、弁護士と税理士がうまく連携できるのが一番望ましいように思います。
実際、当事務所でも、税金の問題が絡むような事案では信頼できる税理士に常に相談できるようにしています。

ところで、相続税対策が必要か否か、そして、具体的に何をすべきかは、当然ながらその方の財産状況によって選択肢が大きく異なってきます。
不動産が多ければ、そのままがいいか、あるいは不動産を処分、あるいは借金をしてアパートを建てたりする方がいいのか、また、それを誰の名義で建てるのがいいのかといったことを比較検討したりするのに対し、預貯金や有価証券類が多いような場合には、不動産と違い、そのままでの評価となりますので、住宅資金贈与や教育資金、さらには生命保険等に関する税法上の特例のうまく利用することを検討して行くことになります。
もちろん、元々遺産となるものが明らかに基礎控除の範囲内ということであれば(定額で3000万円、さらに相続人の人数×600万円)であれば、そもそもこうした対策は必要ないことになりますが、気をつけなくてはならないのは、特例を利用すれば相続税がかからないとか大きく減るというケースでは、申告そのものはしなくてはならないということです。

相続税対策となるようなものはいろいろあります。
たとえば、住宅資金贈与については、法定相続人の場合、一人1000万円までということで遺産を目減りさせる効果が大きいのですが、対象不動産や期間などの要件がありますので、注意が必要です。
生命保険の特例は一人500万円でこちらも節税効果としては大きいのですが、高齢になると、利用できる生命保険は限られて来ます。
ですので、この特例を利用するのであれば、できるだけ早く検討されておいた方がいいと思います。
もっとも、最近扱ったケースでは、外貨建てですが、90歳以上の方が加入できる生命保険があり、円安が進んでいる中では外貨建てのリスクが低くなるというメリットがあり、非常に有効な対策になりました。
ほかにも、条件が合う人であれば、教育資金贈与、さらには相続時精算課税制度といった節税対策もありますし、一般的に知られているところでは、「年110万円までの贈与に贈与税がかからないという特例」が「塵も積もれば山となる」で有効ですが、制度変更があり、恒例となってから始めるのでは効果が見込めない場合も出て来るようになりましたので、気をつける必要があります。
あと、年110万円の贈与については、贈与されたという実体がないと「名義預金」、つまりは遺産として扱われてしまうので、こちらも注意が必要です。
とまあ、いろいろとあるわけですが、こうした相続税対策は細かい条件や非常にテクニカルなところもありますので、専門家の助言を受けられるようお勧めします。

以上に挙げたような相続税対策ですが、相続本体への影響が当然あります。
あらかじめ、特定の相続人が遺産の前渡しを受けるということになるので、その分がいわゆる特別受益にあたると評価されることになるからです。
全員が平等にもらっていればいいですが、現実にはそういうケースの方がむしろ少なく、それが紛争のもとになることが往々にしてあるわけです。
そうした紛争をできるだけ避けるために、最も有効な手段は遺言を残しておくことです。
ただ、遺言も万能ではなく、いざ相続開始となれば、特別受益の問題は出てきます。
しかし、遺言の作成の際に、そうした経緯も踏まえて、条項中に、遺言者の想いを丁寧に綴っておくことで、相続人間の疑心暗鬼を解消することができて紛争回避につながることも期待できます。
ほかにも、たとえば、ずっと献身的に面倒を見てくれた相続人により多く残したいというような場合にどうするかなど、具体的な事案に応じて取れる選択肢はいろいろとありますが、やはり非常にテクニカルで創意工夫が必要なところがありますので、こちらについても、早め早めの対策をご検討されることをお勧めします。

2023年10月02日 > トピックス, 事件日記

日々雑感~「VIVANT」の最終回を予想する

弁護士 折本 和司

仕事に追われていると、行き詰って現実逃避をしたくなる時があります。私の場合、現実逃避で文章を書いたりすることがあり、たとえば、「カニーノの大冒険」という童話を以前書いたことがあるのですが、それも仕事に行き詰っての気分転換で生まれた作品でした。ここのところでもハードワークが続いているため、気分転換で、今話題の「VIVANT」に関する記事を書いたりしましたが、ちょうど最終回を目前にしているということもあって、どのような展開になるのか、ちょっと閃いてメモにしようとしていたら、そのまま文章が出来上がってしまいました。

というわけで、今週末の最終回の前だから意味がある?やもしれぬ「VIVANT」の最終回の展開を予測する記事を書いてみました(ただし、詳しいのは前半だけです)。

ちなみに、この文章は、昨日のうちに友人に読んでもらっていて、なかなか面白い考察だとの評価をいただいたので、ちょっと自信を深めてアップすることにした次第です。

なお、予測が大きく外れていた場合は週明けに即削除しますので、あしからず。

「VIVANT」最終回前半の展開

日本政府とバルカ政府の利権を我が物にしようとする一派が暗躍、テントや別班の中にも裏切り者がいることに乃木は気づいていた。

実はそれをベキとノコルにすでに伝えており、一芝居打つことにした。
まずは資金不足を一気に解消することで、相手の動きを早めさせ、その動きから裏切り者を炙り出すという作戦だ。
日本国内で別班の持つ企業の不利益情報を使った株の信用取引で1000万ドルの利益をあげることで、フローライト採掘に向けての目処が立ったことをテント内の裏切り者に知らしめる。
事態の進展に焦った裏切り者は、バルカ政府側にフローライトの情報を流しつつ、目障りな乃木を排除しようと動く。
裏切り者と繋がるバルカ政府の人間がフローライトのことを知っているとノコルに分からせる動きをして、乃木に疑いがかかるように仕向け、一方で、別班内にいるモニターから殺されたはずの別班のメンバーの生存情報をテント側に流させ、乃木が別班のスパイだとベキ、ノコルに思い込ませようとするのだ。
しかし、この作戦自体、テント内の裏切り者が、ベキ、ノコル、乃木、櫻井が仕組んだ罠に引っかかった結果であり、それによって、テント内、そして別班内の裏切り者が誰かが明らかとなるのだ。
別班側の裏切り者は長野専務、テント側の裏切りものはピキだった。
乃木から報告を受けていた櫻井は長野を疑い、バルカから戻った別班員の入院先の情報を長野だけに流しておいた。
ピキからの連絡を受けた長野は櫻井の仕掛けた罠にまんまと嵌って、乃木を陥れようとする計画に加わってメールを送り、墓穴を掘ってしまった。
野崎は乃木からの連絡を受けて、長野の逮捕に動く。
太田がブルウォーカーであることを知り、山本を動かしたのは長野だったことが明らかになる。
長野は別班に所属していながらテントに情報を流し、さらにはバルカ政府ともつながる三重スパイだったのだ。

この考察の根拠は、消去法です。前提として、別班の乃木がそうやすやすと正体や意図を知られて縛られるということは考えにくく、これは策略であると見ると、それは、テント内にいるバルカ政府側と繋がっている裏切り者を見つけ出すためということになるし、おそらく日本国内にもそのような人物がいるはずと読みました。そこで日本でのモニターが誰かとなるのですが、まず、死んだはずの4人の顔を知っている人物ということになります。しかし櫻井は顔を知られているので、そばでカメラを向けられて無反応ということはあり得ず、それ以外の人物となります。野崎、ドラムは、日本に送り届ける役目を果たしているので、4人の顔は知っていますが、ジャミーンの手術が日本で行われたことを知っており、ベキが生存を知り、驚いたことからして、彼らも違いますし、薫も同様です。となると、引っかかってきそうな人物は長野以外には思いあたらないことになります。そこで彼のメルアドを見返すと「777」と7が組み込まれており、7はテント内で何か意味を持つような使われ方をされている数字であるということ、死んだ山本が、太田がブルウオーカーであることを別の人間から聞いていること等から、長野が別班の人間であり、かつテントのモニターであると推測しました。そして、長野の密告メールをどんぴしゃりのタイミングで受け取ったのがピキであること、ノコルがピキの前で乃木を疑っている態度を露骨に示していることやフローライトの交渉にも関わっていること等から、テント内の裏切り者はピキと予想しました。というわけで、前回の後半の展開は、テント、別班双方の内側にいる裏切り者を炙り出すための罠だと見れば、腑に落ちます。

 

なお、「VIVANT」最終回の後半というかクライマックスについては、全然読み切れていません。もちろん、ストーリーの概略としては、乃木、ノコル、黒須、野崎、チンギスらが力を合わせて義賊であるベキの夢をかなえるという展開になるはずですが、ジャミーンの出自も不明であり、具体的な展開については想像すらつきません。ただ、おそらく、前半で明らかとなる裏切り者をうまく利用して、敵方に偽情報を流して罠にはめるといった流れがあるのではと思っていますが、そこから先は、敵方の人物がバルカ政府の大臣、日本大使くらいしか見えていませんので(もしかしたら丸菱商事も)、観てのお楽しみということにしたいと思っています(ずっと気になっているのは、ジャミーンの抱えているぬいぐるみと、山本の家にあった野崎がじっと眺めていた絵ですが、何か関係してくるのでしょうか?)。

もっとも、エンディングについては、ベキのある発言から推測して、おそらくシンプルなハッピーエンドにはならず、ほろ苦く、余韻を残すようなものになるだろうと見て、ある程度具体的な予想もしてはいるのですが、事前に書くのも無粋な気がしますので、ここでは触れないことにしました。

ともあれ、考察で盛り上がった「VIVANT」、最後まで楽しみたいと思っています。

 

 

2023年09月13日 > トピックス, 日々雑感

日々雑感~「VIVANT」と「シビリアンコントロール」

弁護士 折本 和司

この夏最大の話題のドラマとなっているTBS日曜劇場の「VIVANT」ですが、主演の堺雅人さんや阿部寛さんのファンだということもあり、またそれとは別の興味もあって、放送開始から毎回欠かさず観ております。

ドラマとしてみても、毎回あっと驚くような展開や仕掛けがあって非常に面白いと思いますし、ともすればちまちまと日常風景の中での出来事をなぞるようなここのところの日本のドラマと違って、スケールが大きく、テンポもよくてとても見ごたえがあります。

あと、なんといっても、堺雅人さん、阿部寛さんをはじめ、非常に芸達者な役者さんが揃っていて、その熱い演技力でぐいぐい惹きこまれるのも大きな見どころといえるでしょうし、話題となっている伏線と考察の盛り上がりも一興といえます。

ただ、何より私が興味を惹かれるのは、「VIVANT」が、自衛隊の裏組織とされる「別班」を扱っているということです。

この「別班」は、非合法組織と言われているだけに、それをどのような切り口で描くのかは、単なるエンターテインメントでは済まないところがあると思うからです。

なので、今回はそうした視点から「VIVANT」を取り上げてみたいと思います。

 

この記事の時点で「VIVANT」はすでに7回目の放送を終えていますが、実のところ、「別班」をどのように位置づけて描こうとしているのか、その全体像は未だ見えていません。

主演の堺雅人さんが「別班」の人間ということなので、普通に考えれば、正義のための組織のような描かれ方になる可能性もあります。

最もわかりやすい図式で言えば、国際テロ組織とされる「テント」と日本の警察組織の「公安」、そして「別班」の間の三つ巴のような展開が考えられます。

しかし、私はそのような展開にはならないと予想していますし、あの福澤克雄さんが練りに練った原作だけに、シンプルな勧善懲悪ドラマになるはずはないでしょう。

実際、第7回の終盤あたりでも、今後、一筋縄で行かないだろうなと匂わせる衝撃的な展開がありましたが、「別班」という組織を巡る複雑な背景(もちろん、それ自体はフィクションということになりますが)が明らかにされるに違いないというのが現時点における私の予想です。

 

ただ、ドラマの筋書きの予想というよりは、「別班」を単純な正義の味方のように描くことについては、やはりそれはあってはならないというのが私の願いでもあります。

なぜならば、この「別班」という組織は、実在するのであれば、憲法が定めたシビリアンコントロール(文民統制)の枠組みから逸脱する存在と考えるからです。

私がこの文章を書こうと思った理由もそこにあります。

そもそも、憲法66条がシビリアンコントロールを定めたのはどうしてかということを過去の歴史を踏まえて理解しておく必要があります。

それは、かつて、日本の軍部が力をつけ、暴走して、あの悲惨な太平洋戦争を引き起こしたことへの反省を教訓として、軍人、あるいは元軍人が権力の中枢に入ってはならないということであり、それゆえ、憲法に、わざわざそのような規定が設けられたという経緯なのです。

もちろん、文民のみと制限しても、侵略戦争を厭わないような人間が権力を握る可能性はあるわけですが、軍部を代表するような人間が権力中枢を担わないと定めておくことの「歯止め」としての意義は非常に大きいといえます。

このシビリアンコントロールの規定に従えば、内閣が承知しないような諜報機関のような組織が存在すること自体、非常に危険なことで、憲法上決して容認できないことといえるわけです。

ただ、ネットの記事やコメントを見ていると、緊張感の高まっている国際情勢の影響もあってか、「別班」のような組織が必要であるとシンプルに肯定的にとらえている人も少なからずいるように感じます。

しかし、大切なことは、諜報的な活動をする組織が存在していいかどうかということと、そうした活動をする組織について主権者たる国民が知り、チェックし得るようにしなくてはならないかどうかということは、分けて考える必要があるし、まったく意味が異なるのです。

国民が知り得ないところで、「別班」のような組織が暴走することを容認するようなことがあってはならないし、そのためのシビリアンコントロールなのです。

 

まあ、ドラマごときで、そんな原則論を振りかざすこともないだろうといった醒めた意見をお持ちの方もおられると思いますし、私自身、ドラマそのものについては、「007」や「ミッションインポシブル」のように楽しめばいいと思ったりもするのですが、やはり時に非合法な活動を厭わないとされ、シビリアンコントロールから逸脱する存在と位置付けられている「別班」だけに、単なる娯楽作のような描き方はされないだろうし、そうあってはならないと思うようになったわけです。

実は、私なりに、あと2週間余り後にやって来るドラマのエンディングを予想したりもしていますが、どうかシビリアンコントロールの大切さをどこかで感じられるような結末であってほしいと、そんなことを思いながら、引き続き、「VIVANT」をわくわくと楽しみつつ、視聴して行きたいと思っています。

そして、ドラマがエンディングを迎えたら、あらためてこちらで取り上げてみるつもりです。

2023年09月01日 > トピックス, 日々雑感
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