事務所トピックス

医療事件日記~ある医療事故に関する事故調査報告書と医療事故調査制度のことPART1

葵法律事務所

現在受任しているある医療事故について、病院の経営母体から「事故調査報告書」が届きました。
その病院は公立病院なので、経営母体は公的機関ということになります。
ところで、本件事故は死亡事故で、一昨年秋から運用が始まった「医療事故調査制度」の対象案件となっています。
この医療事故調査制度については、制度設計の段階から、調査の実効性に疑問符がつけられていました。
そして、このたび現実に私たちが受け取った「事故調査報告書」は、その危惧が現実化したといってもいいほど、真相解明とは程遠い内容だったのです。
事件の内容に関することもあるので、詳細については、いずれ依頼者の方のご了解がいただけた段階で取り上げてみたいと思いますが、医療事故調査制度の仕組みとの関連で、いくつか気づいたことを指摘しておきたいと思います。

一昨年秋から始まった「医療事故調査制度」は、制度設計の段階で、医療側が責任追及に利用されることを嫌がったこと等も影響して、非常に中途半端な仕組みになっているというのが、患者側で真相解明に関わる弁護士の立場からの偽らざる感想でした。
たとえば、調査の対象とされる医療事故は「予期せぬ(正確な表現は「予期しなかった」ですが)死亡事故(死産も含みます)」のみとなっていますが、たとえば、植物状態のような重篤な後遺症が残るという重大な事故だってあるわけだし、死亡にまで至らなくとも、過誤そのものが重大なこともあるわけで、死亡事故のみに限定することについては違和感を拭えませんし、そもそも「予期しなかった」なんて表現が、逃げ道を残したような、何とも紛らわしい限定といえます。
また、調査の第一段階では、「医療事故調査・支援センター」自体による調査ではなく、あくまで、事故を起こした医療機関内部の院内調査が実施されるという仕組みになっていることも真相解明という観点からすると疑義のあるやり方です。
実際、今回の報告書も院内調査によって作成されたものです。
一応、院内調査においても、第三者が外部委員として関わることにはなっていますが、外部委員の第三者性、中立性、専門性については制度上何ら担保されていません。
医療機関側が自由に選任できる外部委員は、ただ「外部」の人というにすぎず、果たして中立公正な調査が行えるのかについては甚だ疑問と言わざるを得ないわけです。
こういってはなんですが、大企業の不祥事の際の「第三者委員会」による調査が形ばかりであることを想起させます。
とにかく、このような中途半端な制度で本当に事故の真相解明ができるのか、「仏作って魂入れず」なのではないかと危惧されていたのですが、今回、私たちが入手した事故調査報告書は、まさにそうした危惧が現実のものになっていることを実感させるものでした。
というわけで、この先が長くなりそうなので、今回は報告書の内容の話に入らず、PART2に続きます。

2017年05月31日 > トピックス, 医療事件日記

日々雑感~憲法劇に竹本香織弁護士が出演します!

葵法律事務所

神奈川が誇る「がんばれッ!日本国憲法」(通称「憲法劇」)の公演が、来たる5月19日午後7時と、翌20日午後1時、同日午後5時からの計3回、神奈川県立青少年センターホールにおいて上演されます。
この憲法劇は、大勢の市民、県民の方々が参加しており、憲法にまつわるテーマでオムニバス形式の劇と歌で構成されるミュージカル仕立ての舞台で、今年で25回目となります。
今回の舞台では、どうやらあのM学園の問題なども扱われるそうで、どのような描かれ方がなされているか、楽しみなところでもあります。
そして、その憲法劇に、当事務所の竹本香織弁護士も出演することになりました。
もっとも、本人曰く、「出番はわずかで、ほとんど『ウォーリーを探せ』状態」とのことですが、最初は、みんな端役だったりしますので、いつかは主役に抜擢される日が来るのかもしれません。
現在、戦前の治安維持法も真っ青なほどのとんでもない悪法である「共謀罪」をごり押しで成立させようとしている今の安倍自民党のもとで、さらに改憲の策動が進められつつある中、日本国憲法を守り、その理想を世界に広めることこそ、私たち日本人の使命だと思いますし、そんな時代だからこそ、憲法劇のような取り組みを続けることの意義はますます高まっていると思います。
というわけで、興味とお時間のある方、ぜひ、神奈川県立青少年センターホールに足をお運びください。
そして、竹本香織弁護士の勇姿を探して(?)ください。

2017年05月18日 > トピックス, 日々雑感

日々雑感~「鎌倉代書屋物語」と、ある「遺言」のお話

弁護士 折本 和司

最近、「鎌倉代書屋物語」というドラマにはまっています。

主演は、多部未華子さんで、脇を倍賞美津子さん、奥田瑛二さん、江波杏子さんといったベテラン俳優が固めています。

ドラマ自体も、非情に丁寧に作られていて、心の琴線に触れる良質な作品ですが、観ていてあれこれ思うこともありましたので、ちょっと取り上げてみたいと思います。

 

物語は、鎌倉で代書屋をやっていた祖母が亡くなり、祖母に反発していた孫娘が、最初は継がないつもりだった代書屋を引き継ぎ、その仕事を続けていくうちに、人間的に成長していくという、ざっくりといえば、まあそんなお話なの(だろうと思うの)ですが、観ていて思ったのは、この代書屋という仕事が、私たちの弁護士という仕事にちょっと似たところがあるのではないかということでした。

たとえば、第2話で、離婚する夫婦が、お世話になった人たちに送る最後の挨拶の手紙を主人公が代筆するという回なんか、まさに、離婚事件に取り組む時に、心にとめておかなければならない貴重なメッセージが含まれているように感じました。

ちょっと話が逸れますが、離婚事件に取り組むとき、「人生の再出発」に力添えをするのだという気持ちを忘れないようにと心がけています。

それは、ある著名な弁護士からうかがったことで、その言葉がとても腑に落ちたため、以後、離婚事件に向き合う際の「座右の銘」にしているつもりです。

ただ、「鎌倉代書屋物語」の第2話では、さらにその先にあるべき離婚事件の終わり方の理想形が描かれているように思えましたし、現実的には必ずしも容易ではないにせよ、事件に関わる上で、これもまた「座右の銘」とすべきではないかと感じ入った次第です。

このへん、詳しくはネタバレになるので書きませんが、とてもいいお話でした。

 

考えてみると、弁護士の仕事というのは、部分的には代書屋そのものだったりします。

先日も、ある事件で、依頼者に代わって、親族に送る手紙を「代書」してあげたのですが、実際の事件では、そんな局面がしばしば訪れます。

中でも、現在扱っているある遺言作成の事件は、まさに「代書屋」そのものといえるかもしれません。

遺言は、人生のゴールの前に、遺される人たちに想いを籠めたメッセージを残すという作業ですが、財産をどう分けたいかということだけでなく、自分の死後、子供たちが仲違いせずに仲良く幸せに生きてほしいと願って、そうした想いをしたためた文章を作るという目的もあったりします。

今回の遺言の中にも、財産の分け方以外に、なぜそのような遺言を残そうかと思ったか、依頼者の想いを綴る部分があり、先日も打ち合わせをしながら、そうした依頼者の気持ちを書き留めて帰りました。

人には様々な感情があり、またそこに至るまでの長い歴史があるのですが、そんな中から、できるだけネガティブな要素を排し、あとで読む人に遺言者の心情をポジティブに受け止めてもらえるような表現をと考えている真っ最中だったのです。

遺言に綴る文章が、残された人の心に強く響くものであれば、不毛な争いが避けられることもあるわけで、弁護士(代書屋)の腕の見せ所でもあるわけです。

 

ともあれ、この「鎌倉代書屋物語」というドラマについては、最後まで観続けようと思っています。

大好きな鎌倉が舞台となっていますし、主演の多部未華子さんの演技も見所です。

そういえば、多部未華子さんと倍賞美津子さんは、去年封切の「怪しい彼女」で同じ人物の役を演じており、こちらの映画も最高に面白かったのですが、中でも、表情豊かな多部未華子さんのコメディエンヌぶりは最高で、いっぺんにファンになりました。

もう一つ、そういえば、今年、やはり大好きな作品(漫画)の「鎌倉物語」が、これまた大好きな堺雅人さんの主演で映画化されるそうで、こちらも楽しみなのですが、今年は、大好きな鎌倉がブームになるのではないかなんてことをふと思ったりしています。

皆さん、鎌倉にお出かけあれ!

 

2017年05月11日 > トピックス, 日々雑感

医療事件日記~鑑定意見書完成!

葵法律事務所

〇月✖日
ある医療事件がいよいよ提訴直前となっているのですが、その事件の準備段階における最後の関門が、鑑定意見書の作成でした。
事件そのものは、相談する医師が異口同音に「ひどい」とおっしゃられるほどの、重大な死亡医療事故案件なのですが、輪をかけてひどいのが事故後の医療側の対応で、医学的に矛盾だらけの責任を否定する内容の書面を事故直後にご遺族に送り付けてくるという厚顔無恥ぶりだったのです。
医療側のそうした言い訳が裁判所で通用しないことを明確にしておくために、訴訟提起前の段階で、専門医の方に鑑定意見書をお願いしたという経緯がありました。
お願いした専門医の方は、経験も豊富で、またスタンスとしても極めて中立公正な方です、
実際、出来上がった鑑定意見書は、とても論理的であり、かつ医学的根拠が明確となっていて、非常に説得的な内容となっています。

ところで、鑑定意見書を訴訟提起前に準備するかどうかは、患者側代理人にとっては悩ましいところもあって、ケースバイケースの判断ということになります。
そもそも意見書をいただくまでもないと判断する場合はありますが、逆に、訴訟前の段階では、医療側の言い分がどうなるかはっきり見通せない場合もあり、そういう事件では、訴訟提起後に争点が明確になってから作成をお願いするほうがいいと判断することもあるわけです。
また、鑑定意見書の作成のためには数十万円程度の費用が掛かりますので、依頼者の経済的な事情も考慮してあげなければならないということもあります。
ただ、訴訟提起段階で、専門医の医学的知見に基づく説得力のある意見書があれば、早い段階で裁判官が事件の真相を理解してくれることもあり、早期決着が期待できるというメリットもあります。
今回の事件では、まさにそのような判断のもとに、訴訟提起前の鑑定意見書の作成に踏み切ったというわけです。

今回の事件では、これから訴状を完成させ、近々提訴の運びとなります。
この事件に関しましては、医療事故の背景に、事故を引き起こすような医療機関の発想、さらにいえば、現在の医療に潜む病巣のような問題があるのではないかというとらえ方をしておりますので、訴訟提起後においても、ご遺族の了解を得られれば、可能な範囲で裁判の経過についても報告していきたいと思っています。

2017年03月24日 > トピックス, 医療事件日記

事件日記~刑事事件、少年事件で奔走する日々

葵法律事務所

今、当事務所では、メンバー全員が何らかの刑事事件もしくは少年事件に関わっています。
もちろん、元々、それぞれに取り組んではいるのですが、全員が同時にというのは、この事務所を開設してから初めてのことかもしれません。
局面はそれぞれですが、刑事事件にせよ、少年事件にせよ、短期間で集中的に弁護活動(少年事件だと家裁送致後は付添人という名称になります)を行わなければなりません。
元々、多くの弁護士は日々の業務の中で裁判等の準備や打ち合わせに追われているものなのですが、刑事事件や少年事件は、そこに割り込んで来て、駆けずり回らなければならないわけで、弁護士としては突然降って湧いたような忙しさに明け暮れることになります。
実際、少年事件の場合だと、家裁送致から大体3週間前後で審判期日が入りますし、被疑者段階の刑事事件では勾留は10日、延長されて最大10日というところで処分が決まりますから、2~3週間の間に、できる限りのことをやらないといけないわけです。
少年事件だと、少年院行きかどうかが微妙な事件だと、審判段階で「試験観察」という審判が出ることがあり、その場合は、さらに数か月最終審判まで関わって少年の更生に手を尽くしてあげないといけないのです。
また、刑事事件のほうも、起訴されれば、被告人となり、公判手続に移行するわけで、勾留という身柄拘束が続くのであれば、保釈申請をしてあげなければいけないであったりとか、大変な状況が続くことになります。
ちなみに、保釈申請のことについてよく質問されるのですが、捜査中の被疑者段階の勾留には保釈という制度はなく、日本では、保釈が可能となるのは起訴後になります。

ただ、刑事事件であれ、少年事件であれ、その人や家族の人生、将来が掛かっているといえるような事件は少なくありませんから、弁護人、付添人の責任は非常に重いといえますし、やることは山のようにあります。
少年事件で、今後の更生のため、時には学校の先生に会いに行ったり、環境を変えるためにつてを頼ったり、刑事事件で被害者に会い、謝罪、示談をするために夜遅く遠方に出かけたり、身柄拘束を短縮するために、裁判所に不服申し立て(準抗告といいます)をしたり等々、とにかく局面、局面で、知恵を絞り、てきぱきと動くことが求められます。
弁護士にとっても、瞬発力が必要な事件領域なのです。

もちろん、罪や罰が軽くなればいいということだけではなく、被害者がいれば被害回復を図ってあげなくてはなりませんし、自らの行いを見直し、将来に生かしてもらえるような関わり方も必要なわけですが、それだけに、刑事事件や少年事件に関わり、やり終えた時の達成感は、またひとしおのものがあります。
弁護士たるもの、ずっと、刑事事件、少年事件に関わって行かなくてはならないと、そう思うのです。

2017年03月22日 > トピックス, 事件日記
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