事務所トピックス

日々雑感~「シン・ゴジラ」を観て思ったこと

葵法律事務所

最近になって、時間を縫って「シン・ゴジラ」を観て来ました。

もう上映時間が限られるようになって来ていますが、半年かそこらでDVDが出てしまうという最近の傾向の中では、かなりのロングラン上映となっており、この映画の人気ぶりがうかがえます。

実はこの映画を観に行ったのにはちょっとした理由があります。

ある友人がこの映画の製作に関わっており、エンディングのクレジットにその友人の名前が出て来るというので、それを観に行くという目的もあったわけです。

 

それはともかく、「シン・ゴジラ」、賛否両論あるようですが、映画としては非常に面白かったですね。

点をつけるなら、そうですね、80点くらいは行けそうです。

まず、この種の怪獣映画というのは、怪獣が「現れて」「暴れて」「戦って」「やっつける」という展開はほぼ一緒なので、そういう縛りがある中、どのように驚きを与えるのかという難しさがあると思うのですが、「シン・ゴジラ」は、この点、いくつかの場面で、そうした驚きを味わうことができる作品となっていました。

あと、これはあちこちでそう批評されているようですが、回りくどい日本の政策決定のシステムや、個ではなく集団でことにあたって行くという日本人の気質のようなところをテンポよく、また皮肉っぽくリアルに描いているあたりも、単なる怪獣映画に留まらない面白さになっていると思います。

ただ、あとで思い返し、この作品には大きな欠点があると思い至りましたので、多少ネタバレになってしまうところもありますが、そのことをちょっと書いてみます。

 

その欠点がいったい何かといえば、やはりそれは何といっても映画の結末ですね。

おそらく、この映画の結末は、福島の原発が冷却を続けながら地下水を汚染し続けている日本の現状を重ね合わせたものなのではないかと思うのですが、もし、そうしたメッセージをこの映画に籠めるというのであれば、ゴジラは核兵器によって生まれた怪物なのですから、福島原発事故をより明確に想起させるような結末であるべきだったと思います。

すでにあの原発事故から5年以上が経過し、記憶が風化しつつあるかもしれませんが、福島原発事故は、一歩間違えば、東日本全体に人が住めなくなる事態を招いてもおかしくなかったのですから、そうした恐るべき事故であったことを想起させ、その記憶を後世に残すような結末にすることは十分に可能だったのではないでしょうか。

もちろん、元々、そのようなメッセージはなかったと言われればそれまでですが、今の日本人が作るべき「ゴジラ映画」とは何なのかといえば、やはりそこに行きつくべきだったのではないかと思うのです。

 

しかし、その一方で、この映画ではそのような破滅的な結末は描けるはずはなかったであろうという気もしています。

なぜならば、この映画では、リアリティーを追求し、表現するために、自衛隊をはじめ、マスコミ、政治家に至るまで、非常に幅広く協力を求めているからです。

映画の中では、まあゴジラにかなうはずもないのですが、自衛隊は非常に頑張っています。

また、人がいるような状況では攻撃を中止するなど、人命優先で活動しているという、非常にバランスの取れた判断のできる組織として描かれてもいます。

エンディングのクレジットでは防衛大臣も経験している現東京都知事の名前も出てきますが、それもやはりリアリティーの追求のために何らかの助言を求めたということなのでしょう(製作されたのは東京都知事就任前ですからね)。

結局のところ、原発を推進し、核を容認する姿勢が垣間見える政府に近いところから物心両面の協力を得てきたわけですから、日本(政府)がゴジラに負けて東京が壊滅するというようなバッドエンディングに持って行くなんてことはさすがにできない、そうした大人の事情があったのかもしれません。

 

まあ、実際の映画においても、ゴジラは退治されたのか、そうではないのかについてはよくわからないところもありますが、やはり、原発も含めた核の象徴であり、人類を危機に陥れるやも知れぬ存在であるゴジラ(荒ぶる神のような存在ともいえます)なのですから、人間如きの浅知恵でその攻撃を防げるなんてことじゃなく、未だに核兵器や原発に固執し続ける愚かな人類に鉄槌を下す、そういう結末でなければならなかったのではないかと、観終わった今はそう考えています。

 

そんなことを考えていたら、ふと、「ネクストゴジラ」のストーリーが思い浮かんでしまいました。

もし、「ネクストゴジラ」の製作を検討中で、未だあらすじが決まってないということであれば、関係者の方、ぜひ当事務所宛ご連絡ください(笑)。

ここまで書いたのですから、当然のことながら、バッドエンディングとなりますが・・・。

2016年11月20日 > トピックス, 日々雑感

日々雑感~ジミー・ページが演奏しないならチケット代返金を求められるか?

葵法律事務所

弁護士といえども、日常生活を送っているわけで、その中で体験したこと、思ったことを綴るページを設けました。

気楽にお読みいただける、そんなコーナーにしたいと思いますので、不定期更新ではありますが、どうかよろしくお願いいたします。

その第1回は音楽に関するお話です。

 

ロック界の三大ギタリストといえば、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ページというのが、古くからのロックファンにとっての定説といえます。

その内の2人、ジェフ・ベックとジミー・ページが、日本で一緒に演奏するとなれば、話題となるのは当然で、それゆえ最も高額なチケットは30万円に設定されていたそうです。

このコンサートには、ほかにもチープ・トリック等のミュージシャンや、なぜかジョニー・デップのバンドまでもが出演していたそうですが、ジェフ・ベックとジミー・ページの名前が大きくクレジットされたポスターもそうですし、前宣伝のされ方においても、この2人の「共演」がコンサートの目玉であると受け止められるのは当然のことでした。

しかし、コンサート当日、2人の「共演」は実現しませんでした。

コンサートの終わりの方で、ジミー・ページが出て来て、ジェフ・ベックにトロフィーを渡し、肩をポンと叩くと、一度も演奏することなく、ジミー・ページはステージを去ったそうです。

当然のことながら観客は怒り心頭です。

チケット代の返金を求めるような声が上がるのも心情的に見れば至極真っ当なことのように思えます。

ところが、今回の公演を主催した業者は、謝罪こそしたものの、ほかにも多くのミュージシャンが参加したイベントであること等を理由にチケット代の返金には応じないとしました。

 

では、実際のところ、法的に見てどうなのでしょうか?

詳細な経緯が不明ではあるけれど、現時点までの情報を前提とすると、本件においては債務不履行が成立し、少なくとも半額程度は返金されるべきであり、元々の契約内容や演奏しなかった経緯が明らかになった上のことですが、場合によっては全額が返金されるべきではないかと考えられます。

その理由は以下のとおりです。

まず、業者側は、ジミー・ページが演奏しないことになったのは直前のことであるとしていますが、もし仮にそうだったとしてもその段階で告知しなくてはならないと思います。

そうすれば、最悪、コンサート会場においてでも返金してもらうチャンスがあったからです。

業者側が何と言い繕おうとも、今回のコンサートの目玉がジェフ・ベックとジミー・ページの共演だったことは明らかで、いわば超高級なフレンチレストランで、コース料理のメインディッシュが出てこないようなものです。

この点、2人が同じステージに立ったのだから共演したことになるとか、厳密に見ると一緒に演奏するとは言っていないなどの反論はあり得るのかもしれませんが、このケースでそれは通用しないでしょう。

実際、主催会社の代表者は、自身のツイッターで、「2人のセッションはこれが見納め」という趣旨のことを書いていますが、「セッション」が演奏を意味することは明らかです。

メインディッシュを出さないで、しかもそのことが料理を出す前にわかっていたにもかかわらず、それを知らせず、前菜とデザートのみで満額の代金を要求するようなものだからです(ほかのミュージシャンの方、ごめんなさい)。

もっとも、上記の半額返金というのは、あくまで現時点での情報に基づく判断です。

今回の興行については、そもそも、ジェフ・ベックとジミー・ページが一緒に演奏することになっていたのか、やるならバックバンドとのリハーサルもあるはずなので、業者の言い分は疑問無しとしませんが、その点については元の契約内容を確認してみないとわかりません(最新のニュースでは元々演奏の予定はなかったという情報も出ています)。

解釈の食い違いということもあり得なくはないかもしれませんが、もし最初から2人の共演は約定になく、主催会社もそのことを承知していたとすれば、前宣伝の内容からして、詐欺にあたる可能性が高くなって来ます。

そうした場合は、最初からコンサートの目玉がないことがわかっていながら、目玉があるような告知でチケットを買わせていることになるからです。

たとえば、今年解散と言われるSMAPがいつか再結成されるということでコンサート会場に行ったら、メンバーのうち、2人か3人しかいなかったというのと同じでしょう。

であれば、そもそもチケットを買わなかったはずだということも言えますし、業者の側の悪質度が高いことになりますので、全額返金という線も十分にあり得るところです。

もっとも、実際のコンサートではほかのミュージシャンの演奏が聴けていますので、裁判となれば、全額とまでは行かないかもしれませんが・・・。

逆に、買うはずはなかったということになれば、遠方からわざわざ来た人については交通費も賠償の範囲に含まれるでしょう。

 

以上のように、真相がどこにあるのか、現時点で不明ながら、少なくとも事前告知を怠った主催会社の責任は免れないように思いますが、考えてみると、特に外国人ミュージシャンを招へいしてのコンサートというのはかなりリスクが高いともいえます。

本件の場合、現時点では可能性は低そうですが、著名なミュージシャンの中には非常にわがままな人もいるそうなので、最初は演奏する予定だったのが、直前になって心変わりをして「やらない」ということになるなんてこともまったく起きないとはいえないからです。

そうしたケースの場合、主催会社側が返金に応じざるを得なくなったとして、ミュージシャン側に対して求償あるいはギャラの返還を求められるかというと、それはそれでなかなかハードルの高いことだと思われます。

一昨年でしたか、ポール・マッカートニーの来日公演が、来日後の体調不良を理由に直前キャンセルになった時は、主催会社は大変だったと思います。

その時は、ポール・マッカートニーが翌年、仕切り直しの公演を実現してくれたので、損害はカバーできたのかもしれませんが、みんながみんな、そのように対応してくれるという保証もないわけです。

つくづく、ショービジネスの世界というのは、何かと厄介だと思うことしきりです。

2016年11月17日 > トピックス, 日々雑感

事件日記~離婚と公正証書

葵法律事務所

〇月✕日

ある離婚事件で、話し合いの結果離婚条件が定まり、公正証書を作成しました。

依頼者は生まれて間もない子供を抱えた女性で、夫の暴力などの問題もあり、別居に踏み切って相談に見えられた方でした。

主な争点は、慰謝料、親権、養育費、財産分与といったあたりでしたが、この内、慰謝料については、暴力行為自体の証拠自体はあるものの、慰謝料に固執すると、感情的なもつれから、事件が調停、訴訟へと移行し、長期化が避けられそうもなかったので、依頼者の早期解決の要望を踏まえ、財産分与の中でプラスアルファを得られれば良いということで、慰謝料請求には強く拘らないということになりました。

このあたりの判断については、個別の事情や感情的なこともあって、ケースバイケースで判断するしかありませんが、この事件では、依頼者自身、傷つけあうことは長い目で見て得策ではないと判断されたというもので、結論としては賢明だったと思います。

その代わりというとなんですが、養育費の支払いについて、一般的なケースとは異なり、早期に前倒しでの支払いを得られるという条件を獲得することが出来ました。

本来、養育費とは、毎月毎月発生するものなので、早期の一括という条件を実現することは理屈的にも難しいところがあります。

しかし、子供を抱える女性にとっては、特に子供が幼い時期は働きに出ることも難しいわけですから、そうした時期に前倒しで養育費をもらえることのメリットは非常に大きいといえます(実際、子供がある程度の年齢になれば、働き始めるという選択もできます)。

そうした条件を盛り込んだ合意書を作成の上、その事件ではさらに公正証書を作成しました。

調停、訴訟による解決と違い、単なる合意書では、いざという時の約束違反に即座に対応できないということもあって、離婚の際に、執行力のある公正証書を作成するという選択をする場合があります。

相手を信用するかどうかの問題ではなく、経済的な面でハンディのある母親側の利益を守ってあげるための有効な手立てといえるからです。

信頼できる公証人とのやりとりを重ねて公正証書を作成し、事件は終結しました。

 

離婚は、夫婦双方にとって人生の再出発です。

この事件では、最初はかなり感情的な対立があったものの、交渉過程ではお互いを攻撃し合うというようなやりとりは避けられたし、最終段階では直接会うこともできて早期に双方が納得できる解決ができたように思いますし、離婚後は、双方とも前向きに人生を歩んでくれるに違いないという手応えがありました。

人生に幸あれ!ですね。

2016年11月13日 > トピックス, 事件日記

事件日記~甘く考えてはいけない!「自転車の交通事故」

葵法律事務所

〇月✕日

自転車の交通事故で依頼者の方に後遺症診断が出ることになりました。

事件は、ある高齢の女性が自宅の近くの道を歩いていた時に、前方から走って来た自転車の男性がわき見をしていて、いきなりその女性に衝突したというものです。女性はそのまま病院に運び込まれましたが、右足骨折の大けがでした。その後、1ヶ月余り入院し、さらに2年以上もの通院を重ねたものの、結局、杖なしでは歩行できないという重大な後遺症が残ることになりました。

ただ、不幸中の幸いだったのは、加害者の男性が自転車の損害賠償保険に入っていたことでした。

ニュースなどで取り上げられてご存知の方もおられると思いますが、少し前には自転車の事故により数千万円以上の高額賠償が命じられたという判決も出ています。

今回の被害者の場合、損害保険でそういった損害はカバーされることになりますが、もし損害保険に入っていなければどうなったでしょうか?

加害者の経済状況によっては、重大な後遺症を負ったにもかかわらず、被害者は満足な賠償を受けられないことになりますし、逆に、加害者にとっても高額な損害賠償の債務を負うことになり、そのために財産を失い、あるいは一生かけて弁償を続けなくてはならなくなります。被害者、加害者双方にとって、人生を大きく狂わせかねないわけで、ちょっとした油断がもたらすかもしれない重大な結果を想像すると空恐ろしささえ感じます。

しかし、現状では自転車のために損害保険契約に加入している人は非常に少ないのではないでしょうか。

大人から子供まで、ママチャリからスポーツ自転車まで、自転車はあまりに身近な乗り物であるだけに、事故に遭遇する危険もまた非常に高いといえます。

私たちは保険会社の回し者ではないけれど、こうした事故を目の当たりにすると、やはり、ご自身あるいは家族が自転車に乗られるのであれば、損害保険契約への加入を真剣に考えた方がいいと思うわけです。

 

ただ、もう一つ思うことは、自転車は身近で手軽でエコな乗り物なわけですが、その一方で、日本では、車が優先されていて、自転車が安心して走行できるような環境が必ずしも整備されていないように感じますし、自転車に関するルールも非常に曖昧だと感じます。

そうした曖昧な位置付けでありながら、いったん事故が起きてしまうと、重い責任を負わされるわけで、正直、自転車の事故については、起きた状況によっては、ルールや環境の整備をきちんとやっていない国や自治体こそが責任を負うべきなのではないかと考えたりします。自転車は小学生だって普通に乗るわけですからなおさらです。

またそうなると、やはり早い段階から、自転車の交通ルールについて学ぶ機会であるとか、実地での研修のようなものも必要だと思います。

いかがでしょうか。

 

2016年11月12日 > トピックス, 事件日記

医療事件日記~協力医と一緒に冠動脈カテーテルの映像を検証する

葵法律事務所

〇月✕日

医療事件の真相解明に協力してくださる協力医の方との面談に出かけました。

今回は循環器内科の専門医で、これまでも散々お世話になって来た方です。

通常であれば病院におうかがいするのですが、今回は日程的なこともあったので、ちょっと無理を申し上げたところ、休日にお時間を作っていただけることとなり、ご厚意に甘えてご自宅にお邪魔することとなりました。

案件は、心臓の冠動脈のカテーテル治療に伴って生じた事故に関するものです。

医療事件の中でも、内臓系、とりわけ、脳や心臓に関するものは非常に難易度が高く、専門医の頻繁な助言が欠かせません。

今回の相談の主目的は、証拠保全で入手したカテーテル治療の映像を観ながら、治療中に生じたトラブルの経過について分析してもらうことでした。

カテーテル治療中は、背中の側から放射線を照射しながら、造影剤を入れた冠動脈に挿入したカテーテルやワイヤーが病変に到達しているか、バルーン拡張、ステント治療が奏効しているかなどを確認し、ポイントポイントを映像として保存するというのが通常の手順ですのです、その映像をチェックしてみようというわけです。

正直、証拠保全で入手した映像を私たちが見ても、黒っぽい影がもぞもぞと行ったり来たりしているようにしか見えず、冠動脈のどの血管を写しているのか、どこに病変部位があるのか、医師が具体的にどのような手技を実施しているのかといったことを正確に理解することはできないわけです。

また、今回の相手方病院では、カテーテル治療の記録が経時的にきちんと記録されていないということもあって、協力医の方でも、あとで書かれたカルテの大雑把な記載を手掛かりにしつつ、映像画面を行きつ戻りつしながら分析してもらうという作業になりました。

結局、この日の3時間にも及ぶ検証により判明したのは、カテーテル治療中に、病変部位の近くからさらに枝分かれている別の血管に血栓が詰まってしまい、その血管が塞がれてしまったことと、それに気づいた施術担当の医師がその血管にワイヤーを通そうとして四苦八苦しているうちに、別の血栓が主要な血管を塞いでしまったということでした。

このような協力医の助言により、真相解明の第一段階として、カテーテル治療中に何が起きていたのかの事実経過を把握するという、相談の主目的については十分達成することができたのですが、相談が長時間に及んだにもかかわらず、嫌な顔一つされることなく熱心に対応いただいた協力医の方には本当に感謝しかありません。

事件の法的な検討についてはこれからが本番ですが、共同受任していた弁護士とともに、心地よい疲れを感じながら帰途につきました。

2016年11月06日 > トピックス, 医療事件日記
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